第1騎 英雄王
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いる程だ。陛下は、貴族は能力に見合わず、その特権を貪るばかりとお考えで、領地経営を正しく行わない者には、厳しく処分された。逆に、王弟殿下は貴族達に良い待遇を与え、陛下の見えない所で優遇していたようだ。陛下は、それをご存知ではあったが、均衡が取れてよいと言われていた。こうして、陛下は反貴族派、王弟殿下は親貴族派という構図が出来上がっていた。それもあってか、王弟殿下の周りには、陛下の事を良く思わない貴族達が集まっていたようだ。私は、それを危惧して、陛下に、王弟殿下には“権力”を持たせるべきではない、と進言した事がある。しかし、それも却下された。唯一無二の弟であるから、少々ぐらいなら仕方はないだろうと。
「しかし、陛下がご病気になるなど、考えられませんでしたな。」
そう言うのは、ザルド男爵である。領地経営に難あり、と判断され、陛下にその領地の半分を返上した貴族だ。
「全くです。強靭で、無駄に生気溢れる方でしたからな。」
オルデル子爵が続く。彼は、爵位を伯爵から子爵に取り下げられた。王弟殿下に同行して来た者たちは、皆、領地や爵位を取り上げられた者達のようだ。考えたくはないが・・・“チコの花”は、もしかすると王弟殿下達が・・。確かに王弟殿下は、陛下が御病気になられてから、ほとんど見舞いに来ていない。であるのに、今、このタイミングで来られるとは・・・。どうしても、作為的なものを感じるのは、私の思い込みであろうか。
「皆、兄上は大丈夫そうだ。ナラヴェル、部屋を用意してくれるか?長旅で疲れてしまったわ。」
王弟殿下が、欠伸をしながら言われた。私は、その言動に抑えていた気持ちを、抑えきれなくなってしまった。
「アスバル殿下!!殿下と言えど、陛下に失礼でありましょう!?」
私の気持ちを表すかのように、普段では決して出さない大声を挙げた。部屋にいた全員が、私に注目する。
「何が、大丈夫なのですか!?これ程までに、辛そうにされておりますのに!」
「控えろ!ナラヴェル!お前こそ、宰相と言えど、殿下に失礼であろうが!?」
オルデル子爵が、私の声を遮るように声を挙げた。
「ぐっ・・・。」
確かに・・・相手は、王弟殿下だ。客観的に見ても、私の言動は、家臣として口が過ぎるだろう。私は、どうすることも出来ずに、拳を痛いほどに強く、握り締めた。拳は、血が出ていたかもしれない。
「・・・よい、ナラヴェル。アスバルに部屋、を用意して、やってくれ。」
「!? 陛下?」
暗い空気が部屋中に広がり、重い沈黙が漂うところを、陛下が打ち破られた。その苦しそうな呼吸で。全員の視線は、私から陛下へと移る。
「・・・ナラヴェル。」
私が、咄嗟に答えられずにいると、もう一度名前を呼ばれた。・・・もう、逆らう事は出来ない。私は、感情を抑えて、平
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