第1騎 英雄王
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、体の持っていた熱が内から冷えていくような感覚が心地よかった。その感覚が、余韻のように広がるうちに、再びベッドに倒れ込んだ。先ほどとは違い、急に眠気が襲ってきた。ずっとある体の怠さも、この眠気の中では心地いいと言えるほどだ。私は、体が沈んでいくような感覚に任せて、意識を手放した。
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アトゥス王国暦121年12月24日 夜
白華宮 国王自室
宰相 ナラヴェル・ルフェレンス
栄華を誇るアトゥスに暗い影が立ち込めていた。白く輝く白華宮でさえ、その輝きを失いつつあるかのように…。
「陛下・・・ご気分はいかがでしょうか?」
私は、陛下の自室にあるベッドの横に、椅子を置いて座っている。ベッドには、その持ち主が苦しそうに横たわっていた。
「ナラヴェル・・大丈夫だ。こんなもの、すぐに治る・・・。」
・・そうは見えないのです、陛下。熱が40度を超え、意識すら朦朧とされていて、立つことすら儘ならないではありませんか。・・・陛下にこの症状が出始めたのは、5か月ほど前のチェルバエニア皇国との戦争が本格的になった頃だ。チェルバエニアに出征をさせ、パルヴィンス高原で陛下が御自ら軍を率い、敵を打ち破った後に倒れられた。軍は、クレタ大元帥の指示の下、すぐさまに王都へと帰還した。その後、急いで医師に診せると、驚愕な診断が出た。陛下のご不調の原因は、“チコの花”の毒である・・・というもの。“チコの花”は、遅効性の毒物で、口にした者は気づかぬうちに、その毒に少しずつ蝕まれていく。その特性故、悪用されることが多い為、陛下が“生産の禁止”と“流通の禁止”を取り決めた。その為、この国では“チコの花”を手に入れることは非常に難しい。しかし、何者かが、それを手に入れ、誰にも見つかることなく、陛下に少しずつ食べさせていたということになる。・・・陛下に仇なす輩に気付けなかった自分が、腹立たしい。
「ナラヴェル・・・?」
陛下が、私の名を呼んだ。しかし、その眼は、何処も見てはいない。呼吸も少しずつ荒く、規則性を失いつつある。
「陛下!・・・私はここにおります!」
私は、椅子から立ち上がり、力強く答えた。陛下は、その声に反応して、こちらに顔を向けられた。・・・焦点の合わない眼が、私がいるであろう場所を見ている。とても苦しそうなお顔で。何とかして差し上げたい・・その苦しさを、その辛さを、代わって差し上げたい。そう思った時だった。陛下は・・・笑った。その苦しそうな顔を無理に動かし、笑顔を作ったのだ。
「ナラヴェル・・・お前の考えている事はすぐに、分かる。私は・・“英雄王”だ、この国を、民を・・・お前を置いて、死ぬわけ
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