第1騎 英雄王
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ットに、その大きな体をうつ伏せに横たえ、全身の力を抜いた。柔らかく、冷たいシーツの感触が心地いい。しかし、どうしたのであろう・・・これでも私は、自分の体力に自信がある。大陸一の騎兵を誇るアトゥスを率いる国王である、誰よりも厳しく鍛えているし、その体は2シェルグ(※1シェルグ=1メートル)を超えるのだ。ナラヴェルの言うとおり、医者に一度診てもらうかな。
その怠い体を動かし、仰向けにする。天蓋の煌びやかな装飾を見ながら、昼のことを思い出す。やっとここまで来た・・・アトゥスはもう少しで平和な時代を迎えることができる。建国以来、戦争に戦争を繰り返し、生き残りを掛けてきたこの国は、多くの血を流しすぎた。人々の心は疲弊し、苦しみに悶えている。たとえ、国が大陸一の経済力、生産力、軍事力を持とうとも、その心は、傷で立ち上がることが出来ない所まで来ているのだ。それはまるで、“チコの花”の毒のように、気づかないうちに少しずつ蝕まれていく。
喉の渇きを覚え、体を起こして飲み物を探した。しかし、この部屋には飲み物が一つもなかった。しかたなく、ベッドの横の机に置いてある呼び鈴を鳴らす。すぐに扉がノックされ、若い女中が扉から現れる。
「陛下、な、何か御所望でしょうか?」
女中はこちらを見て、すぐに目を逸らした。
「こんなに遅くにごめん。水を持ってきてくれるかな?」
「い、いえ!滅相にも御座いません。すぐにお持ち致します!」
そう言って、彼女は、すぐに扉を閉めて行ってしまった。扉の向こうから、彼女の走る足音が聞こえた。何だか、顔が赤かったように見えたけど・・・。そう思っていると、部屋にある鏡が目に入った。そこには、引き締まった上半身を隠すこともなく、曝け出している男性がいた。
「あ、しまった。服を緩めたままだった・・・」
つい、自室だと油断して服を緩めてしまう。アトゥスの正式な場以外での私服は、大きな布のようなものを器用に上半身に巻いている服に、それに似た穿き物を穿いている。それ故に、暑いと布をずらして、上半身を曝けて暑さを凌いでいる。・・・そして、ナラヴェルに小言を言われるのだ。
また、明日、ナラヴェルに言われるかなぁと考えているうちに、再びノックの音が聞こえた。
「へ、陛下、失礼致します。お待たせ致しました、お水で御座います。」
女中は、水の入った小瓶とグラスを銀のお盆に乗せていた。
「ありがとう。そこの机に置いておいて。」
私は、扉の近くにある小さな机を指差した。
「は、はい!・・・失礼致しました!」
お盆をさっと置いて、彼女は帰って行った。・・・そんなに反応しなくていいのに。
ベッドから立ち上がり、彼女がお盆を置いていった机に近づく。小瓶を手に取り、グラスに注いでから一気に飲み干した。冷たい水が喉を通り
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