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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
番外編 「あの風のように」
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はできない技だ。
そして、それとほぼ同時に千冬はある事実に気付いた。
彼女が飛行訓練を開始してから約30分の間・・・佐藤はただの一度も地面に触れていない。ミスでの墜落は勿論、休憩のための一時着陸すら彼女は行っていない。一度急降下のような動きも見せていたが、地面すれすれでピタリと止まっていた。
―――人間は空を飛べない。だから人がISに乗って空を飛ぶと言う行為はかなりの集中力を消耗する。ましてマニュアル起動で目立ったミスなしとなれば専用機持ちクラスの実力が無いと不可能と言ってもいい。
それを、佐藤は未だ続けている・・・恐るべき集中力と言わざるを得なかった。
「いかんな。生徒を特別扱いするのは主義に反するが―――あいつは伸びるぞ」
佐藤は金持ちの娘でもなければIS企業の関係者でもない、正真正銘ぽっと出の生徒だ。このようにIS知識などに対するアドバンテージや金銭的、社会的優位を持たない生徒を学園関係者の間では一般と呼ぶ。一般の生徒は明らかにそれ以外の生徒と比べて環境、情報的に不利であり、どうしても大成しにくいと言われていた。
例えば専用機を持つ代表候補生はいつでも申請すれば訓練ができるが、一般生徒は訓練機の予約が取れる時しか訓練が出来ない。資産のある人間の子ならば、IS関係者に声をかけて借り物のISに乗ったり、ISの専門知識を持った人間に教えを乞うことも不可能ではない。そして企業の試作ISを預かっている人間は、現場でたたき上げられるために周囲が環境を整えている。
事実、国家代表のレベルで一般の出は未だ存在しない。一般から代表候補生になれば、それはもう一般ではないのだ。最初の段階で選ばれなかった時点で、世界に立つという夢は潰えたも同然なのだ。
だが、佐藤は一般でありながらそうではないかもしれない。
単にIS適性が高いだけであんな軌道を成功させるなど無理だ。
あいつは代表候補生になるという話を蹴った。民間のスカウトも蹴っていると聞き及んだ。あいつはどうやらずっと一般で通す気らしい。特別な待遇などいらないらしい。―――特別な待遇が無くとも人は強くなれる、とでも言うかのように。
「面白い・・・お前は面白いな、佐藤」
自分の生徒から、一般の出でモンドグロッソに出場出来る才能を秘めた生徒がいる。
その事実に、言葉にならない高揚感を抑えきれない千冬がそこにいた。
当の本人はただ単純に空を飛べるようになったことをはしゃいで遊んでいたに過ぎない。
螺旋収束旋回
(
サイクロンターン
)
とて「蚊取り線香とび」などというふざけたイメージで実行しただけだ。
ただ、「空を飛ぶのが楽しい」という単純明快な思考回路が生み出すイメージ力は、皮肉にもこれ以上なくISの機動に反映されていたようだ。
= = =
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