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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
番外編 「あの風のように」
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は良い心がけだ。
それも、時々オート操作からマニュアル操作に切り替えて重心の動きを入念に確認しているようだ。マニュアルとオートでは機動の自由度が大きく違う事を体に教えているのだろう。

やがて、要領が掴めたのか佐藤は急上昇し、緩やかなターンを描いてアリーナの障壁を添うように旋回し始める。途中何度かバリアに接触したが、数分経つと全く接触せずに飛行できるようになっていた。時計回りから反時計回りへ往復するような動きは、方向転換やバランスのとり方を学んでいるようだった。射撃練習をしている連中は佐藤の存在に気付いていないが、飛行訓練をしている生徒は途中から佐藤の動きに気付いたようだ。
ISにとって円形軌道は初歩中の初歩。これを怠って空を飛ぶと、いつまでたってもターン系の技術で感覚が掴めない。そのことを知ってか知らずか、佐藤はその辺りの基礎からしっかりと入っている。

「意識的にやっているならいい心がけだ。無意識にやっているなら・・・いや、止めておくか」

スタートラインの場所が違っても、努力で差を埋める事は出来る。例え佐藤が類稀なIS適性を持っていたとしても、そのアドバンテージは他の人間の努力で覆せるものなのだ。

そう考えて自分の考えを振り払おうとしたとき、佐藤が動いた。

緩やかに、しかし確実に周回の速度を速めていく佐藤のラファール。やがて外周のバリアを離れた佐藤は美しい渦巻を描くように少しずつ円周を狭めていき、中心近くでは体勢を地面から平行にした向きでの機動まで見せ、中心部で地面と垂直に戻しピタリと停止した。

「何と・・・!」

思わず感嘆の声が漏れる。訓練中の生徒達もざわついていたが、それも無理はない。
あれは螺旋収束旋回(サイクロンターン)と呼ばれる高等技術だ。精密機械のようにムラなく正確に円周を狭めて螺旋を描き、かつその間速度を落とさない。中心部に近づけば近づくほどにその難易度は増していき、中心部近くになると遠心力で平衡感覚を失いそうになるほど狭い旋回を強いられる。

素人がやって出来るほど生易しい技術ではない。あれは『機動部門』の技だ。

IS世界大会であるモンドグロッソには幾つかの部門が存在する。千冬が世界一を勝ち取った総合部門と格闘部門の他にもう三つ・・・射撃部門、競争部門、そして機動部門だ。出場者は他部門との兼用が可能だが、総合部門がリーダーという扱いになる。
機動部門とは言ってしまえばIS版フィギュアスケートとも言える競技で、操縦者がどれだけ高度な機動テクニックを見せられるかを競うものだ。・・・もう理解できただろう。

そう、佐藤が目の前で予行もなしに成功させたそれは、その機動部門で()せるレベルの技なのだ。見よう見まねで簡単に真似られない、普通は練習を積まなければあれほど美しく成功させること
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