第三章 始祖の祈祷書
第五話 竜の羽衣
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「んっ……まだ、休暇が残っていますので、まだここに居ます……んっ……」
「そうか……」
士郎が手をシエスタの頭から離すと、シエスタは離れていく手を何だか物欲し気な目で追っていくが、軽く息を吐きポツリと呟く。
「“竜の羽衣”は、また飛べるんでしょうか?」
「シエスタ?」
「わたし、貴族の方が魔法で空を飛んでいるのを見て、いつも思っていたんです」
シエスタは沈みゆく夕日と共に、暗くなっていく草原の中を、まるで赤い草原を追いかけるかのように歩き始めた。
しかし、太陽はあっという間に沈み、赤い草原が姿を完全に消してしまうと、シエスタは立ち止まり、士郎に振り返った。
「あの広い……広い大空を飛んでみたいって……貴族でも何でもない、ただの平民のわたしだけど、空を飛んでみたいっていつも思っていたんです……」
太陽が沈み、双月と星々が輝く空の下、草原に立つシエスタは、双月と星々の光を受け、淡く、赤く輝いている。
それはまるで、沈みゆく夕日のような、儚げな美しさ。
そんな儚げな美しさを見せるシエスタに、士郎は見惚れていた。
そして、シエスタはそんな士郎の状態に気づきもせず、話し続けている。
「だからシロウさん……もし……もし“竜の羽衣”が飛べたら、一度でいいんです……わたしを空に連れて行ってもらえませんか」
満天の星空の下、緋色の着物を着て草原に立つシエスタは、夜の輝きを受け淡く緋色に燃えているようであり、士郎の目には、まるで一つの絵画のように見えた。
シエスタは目を閉じ両手を広げ、青い空を思う。
「あの……青い空に……」
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