第十話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その4)
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やろう。大広間に通しておいてくれ」
ブラウラー大佐が一礼して部屋を出ていく。全く、話にならん……。
大広間に入ると皆がこちらに視線を向けてきた。昔はこの連中に取り囲まれて喜んでいた。そう思うと自分が嫌になってきた。若気の過ち……、とは言えないな。何であんな馬鹿げたことをして喜んでいたのか……。おかげでもう少しで滅びかけた。
自分の愚劣さを見せつけられたような気がしてうんざりした。まるで粗相をした後のパンツを見せられたような気分だ。汚れたパンツは捨てるに限る。あの男はこの馬鹿どもを潰したがっているが大賛成だ。こんなにも汚れたパンツが有るなど人生の悪夢だ。もしかすると大公も同じような気持ちかもしれない。
「皆、何の用かな」
出来るだけ穏やかな声を出した。最初から喧嘩腰で行く必要は無い。
「今日は侯爵閣下にお願いが有ってきました」
先ずはヒルデスハイム伯が口火を切った。
「コルプト子爵の事です。出入りを禁じ一切の関係を断つとはいささか極端ではありますまいか。それに不当でもあります。子爵は侯にとっても近しい一族のはずです」
ヒルデスハイム伯の言葉に皆が頷いている。頷いていないのは私だけだ。
「コルプト子爵はベーネミュンデ侯爵夫人を煽り、グリューネワルト伯爵夫人を害そうとした。彼の行動は皇帝陛下に対する反逆行為であろう、そのような人物と繋がりを断つのは当然だ、卿らが何を騒ぐのか分からんな」
敢えて冷淡な口調で答えた。もっともそんな事で引っ込む連中ではないことも分かっている。
「コルプト子爵は弟の仇を取ろうとしただけです」
「反逆は許されん。いかなる理由が有ろうともな」
ヒルデスハイム伯達が顔を見合わせている。彼らの顔に有るのは困惑ではない、確信だ。何を考えた?
「コルプト子爵もその事については反省しています。自分の取った行動が反逆と取られるとは思っていなかったそうです。ただ弟の仇を取りたいと、その思いが先走ってしまったと」
ヒルデスハイム伯が神妙な表情をしている。もっともこの男の神妙な表情など当てにはならん。
「ヒルデスハイム伯、私がブラウンシュバイク公から聞いた話とは少し違うな。子爵は自分の行為が反逆だと理解していたと聞いているぞ。それとも卿は公が嘘をついていると言うのかな」
敢えて厳しい口調で言った。相手が乗ってくれば激高した振りをして叩き出す。だが伯はこちらの思惑には乗らなかった。落ち着いた口調で話してくる。
「そうでは有りません。子爵はブラウンシュバイク公の前では興奮してしまい愚かな事を口走ったと後悔しております。本心ではなかったと」
それが本当なら殊勝ではあるが、到底信じられんな。
「コルプト子爵の気持ちは理解できますし無視して良いものでもありますまい。誰だとて肉親が殺されれば
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