第十話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その4)
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子爵が来たのか、当家も付き合いは断った筈だぞ」
「いえ、そうでは有りません。ヒルデスハイム伯、シェッツラー子爵、ヘルダー子爵、ハイルマン子爵、ホージンガー男爵、それにカルナップ男爵です。コルプト子爵の一件でご相談が有ると。……失礼しました、ラートブルフ男爵を忘れていました」
やはりな。コルプト子爵が親しい貴族に泣きついていると言う話は聞いていたがそれだな。話がまとまってここに来たと言う訳か……。面倒な……、妻と一緒にケーキを食べに行けばよかった。
「忘れてくれて構わんぞ。どうせならあと二、三人忘れて欲しかったな」
ブラウラーが困ったような顔をした。無茶を言うと思ったのか、それとも誰を忘れれば良かったのか考えているのか。あるいは私に呆れているのか……、判断に悩むところだが、気晴らしにはなる。
それにしても妙な顔ぶれだ。当家に親しいものもいればブラウンシュバイク公爵家に親しい人間もいる。なるほど、新当主には話し辛いか。これまでの経緯を考えれば無理もない事ではある。あの小僧、余程敬遠されているらしい。結構な事だ、昼寝の邪魔をする馬鹿が居ないという事だからな。
「それで何を望んでいるのだ」
「コルプト子爵を受け入れて欲しいという事でしょう。その後でブラウンシュバイク公へのとりなしを頼むつもりかもしれません」
「……」
溜息が出た。そんな目で私を見るな、ブラウラー。全く話にならん、連中は何も分かっていない。リッテンハイム侯爵家はブラウンシュバイク公爵家と手を握ったのだ。その手は政府、軍とも結ばれている。
ブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家、政府、軍は内乱を防ぎそれぞれが繁栄するために四者連合を結んだ。この連合によりサビーネは皇后になりリッテンハイム侯爵家は帝国屈指の権門として繁栄する事が約束された。
何故コルプト子爵如きのためにその輝かしい未来を捨てねばならないのだ? コルプト子爵にそれだけの価値が有るか? ベーネミュンデ侯爵夫人を唆してグリューネワルト伯爵夫人を害す? 良くもそんな愚劣な事を考えたものだ。そんな馬鹿を助ける価値など何処にあるのだ。
もし当家がコルプト子爵を受け入れればどうなるか、当然だが我が家はブラウンシュバイク公爵家、政府、軍から敵対行為だと非難されるだろう。繋いだ手を離したとみられるのだ。そして当家が代わりに握ったのは役に立たないコルプト子爵の手だ。我が家の立場は恐ろしいほど不安定なものになる。
連中は何も分かっていない、いや分かろうとはしない、認めたくないという事なのかもしれん……。四者連合は彼らには何の関わりもない所で生まれた。その事が気に入らないという事は十二分に有り得る……。
「話にならんな」
「会えないと伝えますか」
「……いや、会おう。連中の蒙を開いて
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