As 11 「諦めないという決意」
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「確かにそうだね。でも今までにそういう人はいなかった感じだよね?」
「それは……自動防衛システムのせいじゃないかな。一定期間魔力を蒐集しないと主を蝕むって言ってたし」
「だろうね。でも例えば……」
俺はそこで一旦口を閉じて、ふたりをそれぞれ見る。不思議そうに首を傾げるあたり、こちらの意図は分かっていないようだ。
「君達みたいな人が主だったならありえない話じゃない。君達は、多分他人を傷つけるくらいなら自分が辛くても我慢するよね?」
高町達はどれだけの苦痛があるか分からないため迷っているようだが、彼女達ははやてと似ているところがある。おそらくはやてと同じ道を選ぶだろう。
「闇の書に蝕まれれば、身体に障害が出たっておかしくない。君達みたいな性格の主なら、シグナム達にとって大切な存在だと思う。目に見える形で弱っていくのを黙って見てはいられないんじゃないかな……」
「……でも、闇の書が完成しちゃったら」
「そのことを多分シグナム達は知らないんだと思うよ。彼女達も言い方は悪いけど闇の書の一部。どこか壊れていれば、記憶が欠けていてもおかしくない」
部屋の中に沈黙が流れる。
完成してもしなくても、主は死んでしまう。何でこんなにも理不尽なのだろうか。
クロノ達はこんな思いをどれだけ重ねてきたのだろう。今回の事件だけで、俺の心は擦れ切れてしまいそうだ。
蘇るように脳裏を走るはやての声や笑顔、彼女との思い出。苦しみながらも彼女のために必死なシグナム達。諦めるなと背中を押してくれたシュテル。様々な感情が芽生え、それによって心が押し潰されていくような感覚に襲われる。
…………待てよ。ナハトヴァールが支配するのは完成してから一定時間の経過後だったよな。その間は管制システムが生きているということ。なら管制システムの協力があれば、はやてを救う道も残されているんじゃないか……。
「……シグナム達を止めよう。闇の書が完成しちゃったら、たくさんの人が危険な目に遭うから」
「うん。……それとショウくんの予想が当たっているとしたら、シグナムさん達の主を救いたい。最後の最後まで諦めたくないよ」
「……俺は諦めるつもりはないよ」
弱々しく言われた高町の言葉に返事をするように、俺は静かにだがはっきりと言った。ふたりの視線がこちらに向いたのを感じたが、気にすることなく続ける。
「シグナム達は立場上は敵でも根っからの悪人だとは思えないから。彼女達の主と世界、ふたつとも救ってみせるとは言えないけど最後まで諦めたくない……」
もう嫌なんだ。大切な人を失うのは……、思わず口にしそうになったその言葉を必死に飲み込んだ。
感情を抑えるために無意識に握り締められていた手を、誰かがそっと包んだ。視線を向ければ、優しい微笑を浮かべ
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