彼女の望みのままに
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袁家に忍ばせた間諜から公孫賛と趙雲生存と袁紹軍の次の行軍先とその時機の報告が同時に入り、軍師会議の場は静まり返っていた。
軍師の三人の視線が私に集まり、それぞれを見やると一様に違う色を携えている。
稟は畏怖と敬愛を、風は感謝と寂寥を、桂花は……歓喜と覚悟を。
「予定通り、公孫賛を生き残らせる事が出来たわね」
自分で口にした事によって少しだけ口角が上がる。思い通りに行った満足感からであるのか、それとも英雄の生存が単純に嬉しいのか。きっとどちらもだろう。
私達の行った行動によって全てが変わった。
河北動乱の前、どう行動を起こすかについて論を交わしていた時に訪れた店長の一言。それによって私の望むモノを手に入れるにはどうすればいいかを思いつかせてくれたのだ。
店長は役満姉妹に店の呼子役を手伝わせた事の礼を、新しい甘味と共に持ってきた。その時に組み上がったのが今の現状。
袁紹軍に徐州を攻め入らせる。役満姉妹という最高の扇動力を使い幽州を掻き回す事によって。
桂花から田豊の思考がどう向かうかを聞いていたからこそ思い浮かんだ。田豊は慎重にして堅実、確実な勝利をこそ望む人物とのこと。
それならば、幽州全体の反抗心を煽って兵数を減らし、掌握までの時間を増やしてやればいい。長い期間あの地に縛られてしまえば私達と戦うには時間も人手も足りなくなるのだから。
短期で打開する為に必要なのは公孫賛の所在、もしくは確実な死亡。彼女が他の場所で生きている限り、幽州に住まう者は希望を持ってしまうのだから。もう一つ必要な事は有力な将。劉備軍の将を引き込めれば我らと相対するには十分。
田豊ほどの人物が利害を計算しつくせば、必ず袁術との一時同盟に行き着くだろう。孫策がいるあの地も問題だらけである為に。
――ただ……余りに行軍時機が早すぎる。まるで前もって準備していたかのような……
そこで直ぐに思い至った。眉根を寄せて桂花を見ると……彼女も気付いたのか唇を慄かせていた。
稟と風はどう思うのか。二人を見るとどちらもが目を瞑って思考に潜っている。
「風、孫策軍がまだ内部の鎮圧に動いているというのに余りに時機が……って寝るなっ!」
「おぉっ」
目を開いた稟が問いかける途中で、大きな声と同時に頭を叩かれて風は目を開けた。そのいつも通りな二人の様子に自然と苦笑が漏れ出る。
「ふふ、おはよう。……まずは桂花から聞きましょうか」
二人がこれから行うやり取りを見るのも楽しいが、会議の方が優先されるので桂花に話を向けると、唇を引き結んでから神妙な面持ちに変わった。
「夕……田豊は最初から袁術……いえ、張勲と対立してはおらず、両袁家による徐州制圧が本当の目的だったのではないかと」
やはり桂花はそれを確信し
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