彼女の望みのままに
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そう暗に言われたのだ。ただ、三姉妹は全く反対しなかった。
それを疑問に思ってここにいる三人――凪、真桜、沙和は役満姉妹で一番冷静でつなぎ役である人和を呼び出していた。
「……人和は何も思わないのか?」
静かに、鋭い視線を向けて問いかけたのは凪。彼女は主に疑問を持ってしまっていた。
民を戦に送るような策。扇動とはそういうモノ。
単刀直入に聞いた凪に対して、沙和は苦い顔をして、真桜はすっと目を細めた。
「別に。店長には美肌促進料理とか『かろりぃめいと』の借りが溜まっていく一方だったから返せたのは大きいわね」
「そこじゃない。また民を扇動するような事をして……何も思わないのかと……」
ああそれか、というように一瞬表情を変え、すぐにいつもの無表情に戻った人和は卵焼きを口に運んだ。
もくもくと咀嚼して味わい、飲み込んでから緑茶を啜って三人を見回す。
「前の私達は無知のままで扇動した。でも今回は自分から分かっててそれをした。だから罪悪感に苛まれていないか、華琳様に対して不信感を抱いていないか、そう言いたいわけね」
コクリと、三人は厳しい面持ちに変わって頷く。人和の表情は変わらないままであったが、少し冷たい輝きを瞳に宿らせた。
「なら聞くけど。あなた達は元々義勇軍だったんでしょう? 民を扇動して戦に駆り立てたのは同じじゃない。今だって次の戦の為に軍として兵を徴兵してるけど、兵だって元は民でしょう? それはどう思うの?」
言われて三人は息を呑み、昏い顔に変わる。
凪が何かを言い返そうと口を開くと、その必死な顔を見て人和が手をすっと差し出して制した。
「それらの兵は違う……なんて言わせないわ。私達は舞台でいろいろな人の前で歌ってきた。兵も、民も、男も女も子供も……皆が私達の大切なお客様だった。そこに区別は無いの。舞台の前では皆一緒。そこからは個人の想いの向く先によるのよ。私達はきっかけを作っただけ。抗うも良し、抗わないも良し。一重に公孫賛がそれだけ民に慕われていたという事でいいじゃない」
「でも……このやり方はさすがに無いと思うの」
凍りつくような、感情が挟まれない声を聞いて沙和は哀しみに暮れた。しかし人和は尚も自身を崩さずに返す。
「華琳様の勢力内でも歌ってるわよね。間違いなく兵の補充に役立ってるでしょう。それが他の国での戦前や戦中になっただけで何が違うのかしら?」
その言葉に、三人は何も言い返せなかった。舞台を手伝った事もあるがそんな考え方には気付いていなかった為に。
一様に昏い顔をして俯いたままでいる三人を見て、人和は一つため息を落とした。
「嫌に決まってるじゃない。歌を聞いてくれる一人一人が私達の大切な人なのよ? でもね、黄巾が終わって、生き残ってから
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