暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
彼女の望みのままに
[5/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
身体をなぞっては……っ……ぶはっ」

 言われた事を理解して、稟は突然慌て始め、独り言を少し零し、盛大に鼻から血を噴き上げて倒れた。

――稟はこの私を籠絡するつもりでいたのかしら? ふふ、面白い子。しかしこの癖さえ治せたらたんと可愛がってあげられるというのに……私が我慢しなければならない事は多いわね。

「稟ちゃんが自分の望みを手に入れるには確かにまだ早いようですねー。はーい、トントンしましょうねトントーン」
「あんたたちねぇ……はぁ、すみません華琳様。私はまだ少し焦っていたようです」

 稟の介抱に向かった風に何か言いたげであった桂花は、緩い空気から本音を零す事が出来るようになったらしい。
 桂花は少しでも早く田豊を助け出したくて仕方ないのだろう。友への助けを我慢した風や稟から言われた事によって冷静になったのも一つか。

「いいのよ。あなたの欲しいモノも必ず手に入れてあげるから……今は我慢して頂戴ね。風も稟も、最後には必ず手に入れてみせるわ。ふふ、この有様じゃ会議はここまでね。ではこれにて会議を終わる」

 桂花と風からの感謝の視線を受けて立ち上がり、会議室を後にした。

 分かっている。
 臣下の望みを叶えるのも王の役目。
 でも今はまだ、私の望みを優先させて貰う。それが考え得る最善なのだから。
 全ては乱世の果てに繋がっている。いや、繋げてみせましょう。私の全てを賭けて。あなた達の全てを賭けて。




 †




 その店の店内は活気に溢れ、そこかしこで動き回る少女達の元気な声が響いていた。
 区切られた一室では四人の少女達が黙々と、並べられた数多の料理に箸を進めている。

「しっかし、よく店長はんが許したなぁ。あの人、そういうの嫌いとちゃうん?」

 机の端のエビチリを掴みあげながら、李典――真桜は眼鏡の少女に問いかけた。

「ええ。でも今回は友達を助けたい気持ちが勝ったみたい。逆に頼まれたくらいよ。軍とは別に私達と店長個人の契約もして欲しいって言われたし」

 答える少女の名は人和。嘗て張梁と呼ばれていた人物。役満姉妹の末っ子である。
 箸で目の前にある卵焼きを小さく切り取り、大根おろしを乗せながらの返答。
 役満姉妹は戦前に幽州へと赴いて、行く先々の街で小さな舞台を開いていた。華琳から為された一つの命によって。

『幽州で歌ってきなさい。選曲はその地の雰囲気にあったモノを選んで貰いたい。歌う街は三つで十分だけれど、無事に帰って来れるならどれだけでも歌って来ていいわ。ただ、娘娘の本店と人員の入れ替えがあるからその馬車に乗って帰ってくること』

 人和はそれがどういう意味を持つか聞かされている。
 民の扇動の布石。黄巾の時のように無辜の民を戦に駆り立てろ、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ