彼女の望みのままに
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しかし本当に田豊は優秀だ。徐晃の動きが無ければ孫策との密盟はありえず、袁紹軍は今よりも傷つかず、劉備軍は容易に追い詰められ、下手をすればこちらにとって苦しい展開となっていただろう。
「稟、孫策の方は万全なのかしら?」
別の話を向けると眼鏡を軽く持ち上げ、彼女は鋭い眼差しで私を見据えた。
「問題ないでしょう。孫権は無事に敗北し、今の時期は一番動きやすい。少しばかり不安があろうと汚名返上のいい機会となりますから孫呉側としては士気も高くなると思われます」
「それならあちらの心配はいらないわね。これで袁家の策も全て回避出来るけれど、まだ隠し玉があるかもしれないから国境付近の兵数の強化と秋蘭、真桜、流琉を送っておきましょうか」
一つ不満の色が宿った瞳を携えて稟と桂花は眉を顰める。分かっている。体裁を気にしなければ袁家討伐の絶好の機会だと言いたいのだろう。孫策側に提示した一番目の展開をこちらから無理やり行うべきだとそう言っている。
ため息を一つ。後に風を見ると相変わらず不思議な空気であった。掴み処の無い彼女なら私が欲しいモノに気付いているかもしれない。
「二人は少し不満みたいだけれど……風はどう思うのかしら?」
「稟ちゃんも桂花ちゃんも優しくてせっかちさんですからねー。兵の命よりも重たいモノはあるのですよー。華琳様の欲しいモノはその類なので気にしなくてもいいんじゃないでしょうかー」
のんびりと紡がれた言葉に不機嫌になったのは桂花。私の為になる事を読み取れなくて少し嫉妬しているのだろう。私に対する意見では無いから話す事も出来るようにした風の手腕にもか。
「でも……今袁家に攻め入れば最小の被害で莫大な領地を勝ち取れるのよ? 風聞の問題も黄巾時のよしみとでもすればどうとでも……」
「ふむ、桂花。これは私達が見誤っています」
稟は桂花の言葉の途中で気付いたようで言葉を遮った。風の発言で思考が広がったのでしょう。
「どういう事よ?」
「簡単な事ですよ。華琳様は全ての箱を開けさせて、中身のいい所を全て手に入れる……間違いなくその通りなのですから」
先の交渉の戯れが余程気に入っているようで、稟は私に向けて微笑んだ。桂花も全てを理解したのか口を噤んだ。
「おお、桂花ちゃんに強力な好敵手現る。華琳様、今日の夜は稟ちゃんで決定ですねー」
静寂。これほど上手い間のはずし方は無いだろう。後に、正気に戻った桂花はギリと歯を噛みしめ、会議場内に一人を除いて緩い空気が漂い始める。
「ふ、ふふ風!? 何を言って……確かにそれは嬉しい事ですが……いや、まだ早い……ここから徐々に籠絡していく予定であるのにいきなり……ああ、まだ心構えが出来ていない……ダメです華琳様。そのように手折れそうな美しく細い指で私の
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