彼女の望みのままに
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
価している為に何も言わないようだ。
「孫策軍に対する牽制の意味合いもあるのではないかと。我らが行った策と同じように孫策軍も民を扇動しておりますし、それに気付けばこその早期侵略でもあるのでは?」
「なら直ぐにでも孫策を動かして来るわ。いくら元から欺瞞分裂していた同家だからと言って、劉備だけ仕留めても袁術側に利が無さ過ぎよ」
桂花の言葉に引っかかりを覚えた。
――このままだと孫策が無傷で残る為に袁術側には利が少ない。なら……袁紹側に利はあるのかどうか。そうか、そういう事か。
「面白い事をしてくれる」
自然と笑いが零れた。三人は不思議そうに私を見ている。
――いつもなら、自分達で考えなさいと言う所なのだけれど……特に桂花にはこれを乗り越えて貰わなければならないから話しましょう。
「戦わせたい虎が違って来たのでしょうね。いえ、あれらは虎と龍の方が妥当かしら。それなら……今回時機を早めた一番の狙いは鳳虎相対としましょうか」
言うと目を見開いた。三者三様に。
桂花は震え始める。自身の親友であり好敵手が強大な壁だと再確認して、そしてきっと……私への信頼から。
胸の内に沸き立つのは、己が王佐の成長と向けられる多大な信頼に歓喜する心。だが、今は何も言わず、思考を回そう。
田豊の狙いは一番の場合であって他の場合への対応をも考えられている。
劉備軍は追い詰められた場合、黄巾での関わりから私達を頼る確率が高く、追い打ちとして、その戦では無傷な孫策軍を私達への当て馬に出来る。それが一番目。
私達を頼らない場合は河北へ逃げる事は出来ず、無理やり孫策と袁術を抜いていくしかなく、二虎競食が成り立つ。これが二番目。
他にもつらつらと並ぶ展開を頭で積み上げてみる。三人も敵が次にどう動くのが最善かを考えているようで、静かに思考に潜っていた。
しかし乱世とは本当に面白い。奇しくも、あの男が私を早い段階で倒そうと行った行動がこの状況を生んだと言ってもいい。徐晃が動かなければここまで掻き回されなかっただろう。
最初の予定では袁紹軍と先に当たっていたのは私達。河北動乱が終わり次第、機を見て宣戦布告をする心算だったのだから。
それがどうだ。効率的に私が今回欲しいモノを全て手に入れられる舞台となった。正直な所、天からの計らいを感じずにはいられない。
田豊の思惑すら図らずも私のなって欲しい展開と一致し、孫策にしてもこの時機に全てが整っている。関靖の事は残念だけれど公孫賛も生き残らせる事が出来た。
後は……少し待つだけ。青い果実が熟すように、じっくりと、たっぷりと待ったのだから、これが終われば食べるだけ。
手に入った時の事を思うと、ゾクゾクと背筋に歓喜の震えが沸き立って、吊り上りかける口角を抑え付けた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ