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渦巻く滄海 紅き空 【上】
二十九 水面下
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いっと突き出す。
「まぁ、よい。用件を言え。話はそれからだ」









「――――それで波の国の人達は助かったんだってばよ!」
意気揚々と語る。楽しそうに話す彼女を、彼は微笑ましそうに見た。

滝の傍に連なる岩。その中でも一際大きい岩場に二人は腰掛けていた。彼らの足先に触れるか触れないかの瀬戸際まで満ちている水は、陽光でキラキラと煌めいている。
和やかな会話。自身の武勇伝を、身振り手振りで語るナル。対照的に穏やかな顔つきで彼女の話に耳を傾けるナルト。水面に映る二人の容姿は本当にそっくりで、まるで鏡が合間に立っているようだ。違う点と言えば髪の長さぐらいだろう。
最初は警戒していたナルも今やすっかり打ち解けている。もっとも話しているのはもっぱらナルのほうで、ナルトは彼女の話に相槌を打っていた。

「すごいね」
「へへ…っ」
褒められ、照れたように頭を掻く。得意満面で話をしていたナルだが、直後顔つきを険しくさせた。拳を握り締める。
「でもまだまだだってばよ。あのネジに勝つためには……」
真剣な顔でそう呟くナルをナルトは静かに見つめた。暫し逡巡する。しかしながらずっと気に掛かっていたことを、彼はとうとう口にした。

「……さっきみたいなこと、よくあるの?」
「ほへ?」
唐突な問い掛けにナルは瞳を瞬かせる。きょとんとしたあどけない顔に、ナルトは苦笑した。彼の言葉の意味に気づき、表情を一変させるナル。
顔を歪める。気まずそうに彼女は視線を落とした。おそるおそる口を開く。
「見てたってば…?」
素直に頷くナルトを見て、目を伏せる。先ほどナルをあからさまに避けた男二人の態度。彼らの事だとはっきり理解し、彼女は足下を満たす青い水に足先をつけた。

両足をばたつかせる。わざと撒き散らした水飛沫がナルトの足にも僅かに掛かった。水面下を泳いでいた魚が驚いてパッと四散する。
暫時無言を貫いていたナルだが、やがて顔を上げた。浮かべたのは、微笑。

「偶にだってばよ。大したことじゃないってば」
その場を誤魔化そうとする。だが彼女の意図をナルトは即座に見抜いた。立て続けに言葉を続ける。
「偶にって事は今回だけじゃないってことだよね」
ぐっと言葉に詰まる。押し黙ってしまったナルを、ナルトは真剣な眼差しで見据えた。
丘から流れてきた雲が彼の顔に影を落とす。翳りの入った顔から覗き見える青い瞳がナルを射抜いた。殊更強い口調で「辛くないの?悔しくないの?」と畳み掛ける。


「――――憎くないの?」

その一言に、ナルは勢いよく顔を上げた。キッとナルトを睨みつける。
「ふざけるなっ!!」


きっぱりと言い切る。その様はいっそ男らしい。彼女の眼に宿るのは、決然たる強い光。
ナルトは暫しまじまじとナ
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