二十九 水面下
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曇天を仰いでいた彼は、前方からかけられた声に、ひょいと視線を滑らせた。
視線の先。厳かに佇む男の姿が目に入る。大柄なその身からは、警戒と共に呆れ返ったといった風情がヒシヒシと伝わってくる。だが自身を見据えるその眼光は三忍と呼ばれるに相応しい。ひゅうっと口笛を吹く。
「あんたに知ってもらっているとは光栄だ」
「なぜ此処にいる?」
賞讃の言葉すら聞く耳持たぬと睨みつけられる。わざとらしく肩を竦めると、更に鋭い視線を投げつけられた。
穏やかな口調とは裏腹に、全身から滲み出る威圧感。それを一身に受け、彼はゾクリとした戦慄を覚えた。
思わず下唇を舐める。乾き切っていた。
「お主は死んだはずじゃなかったかのう」
包帯の下で行われたその行為には気づかなかったのだろう。気に留めた素振りもなく、言葉を続ける。
「……―――桃地再不斬」
静かに己の名を告げる三忍の一人―――自来也。生きる伝説に鋭い視線で射抜かれながら、再不斬は、にやり、と笑ってみせた。
「カカシから死んだと聞いていたがの」
「奴の早とちりだろうよ。現に俺は此処にいる」
軽い調子での会話。だが決して平和な会談で済まないというのは、二人の傍を流れる空気が物語っていた。
冬でもないのに鳥肌が立ちそうなほどの冷気。二人が対峙するこのなだらかな丘陵だけ、ひんやりとした空気が流れている。対照的に、丘向こうに横たわる里はのどかであたたかい活気に満ち溢れていた。
「……そう。そこが聞きたい」
表面上平和だった会話を断ち切ったのは自来也だった。目を細める。
「『霧隠れの鬼人』であり抜け忍であるお主が、なぜ、木ノ葉の里にいる?」
一言一句強めて言い放つ。静かだがその分凄みが感じられる自来也の視線を、再不斬は出来る限りの余裕を持って受け止めた。わざと面倒臭そうに、ふうと嘆息する。
「俺が観光に来たら何かマズイか?」
「観光?ふん。もう少しマシな嘘をつくんだな――――わしに用があるんだろう?だからそのままの姿で目の前を横切った」
自来也が再不斬を見かけたのは本当に偶然だった。ナルの許へ向かおうとした矢先に見つけ、後をつける。指名手配されている者が素顔を晒す。その意味を正確に理解した自来也はあえて再不斬を尾行した。彼の誘いに乗ったのである。
「目的はわしの命かのう。そう易々ととれる代物じゃないぞ。特にひよっこにはな」
挑発。背筋がぞっとするほどの低い声音で自来也は嘲笑う。再不斬のような男は基本短気である、と自来也は経験上知っていた。皮肉たっぷりの笑みを零す。
「まさか。あんたにゃ敵わねえよ」
だが意外にも再不斬は自来也の揶揄を軽く受け流した。予想外だったのか、おや、と瞳を瞬かせる自来也。思案げに再不斬を眺め、ややあって顎をぐ
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