高校一年
退路は既に
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一人、気まずさを胸に溜め込むしかない。しかも、この場で気まずいだけでなく、こいつらとこの先三年間やっていかねばならないのである。一体どうしたものか。
「で、そこのお前、お前は誰よー?どこのポジションや言うてみい」
「おいおい、彼が野球するかどうかも分からないのにポジションなんて尋ねてどうするんだ。本当にお前は馬鹿だな。」
その場でポツンと浮いた存在の翼に美濃部が声をかけ、そんな美濃部をまた宮園がバカにする。
「お、コイツはな、ワイの友達やで!ヨッシーて言うねん!ほら、挨拶せぇよ!」
勝手に鷹合が他の3人に紹介し始め、まるで自分の親のように自己紹介を促す姿に翼は閉口した。
しかし、黙ってばかりも居られない。口を開こうとしたその時
「よーし、それでは寮生ガイダンスを始めるぞー!」
食堂に高い声が響いた。
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「予定より少し早いが、始めたいと思う。どうという事は無い話なので、食べながら聞いても構わん。」
食堂の隅から声を張っているのは、ジャージ姿の女性だった。歳はまだ二十歳台に見える。長く黒みが深い髪をポニーテールにまとめて、目鼻立ちがハッキリとしている。美人だなぁ。遠目に翼はそう思った。
「申し遅れたが、私は三龍高校研志寮の寮監を務める、浅海奈緒だ。国語科を担当している。どうぞよろしく頼む。」
パチパチパチと、浅海の自己紹介に大してわざとらしい拍手をしたのは鷹合。浅海は鷹合の方を、一瞬睨んだ。翼は見逃さなかった。その視線が、凄まじい気迫を伴ったモノである事を。
(い、今めちゃくちゃ怖い顔したよな!?)
慌てて鷹合の方を見るが、しかし鷹合は睨まれていた事に気づいても居らず、ドヤ顔を見せつけていた。翼はため息をついた。
浅海による、寮生活の上での注意事項の説明が続く。どうにも翼は、その説明が自分らにされてるものだと思わずに居られなかった。言葉の最後に、必ず自分達の方を見るのだ。自分達というか、鷹合の方を。
「……以上をもって、ガイダンスは終了としたい。質問がある場合は後で受け付ける。もうひとつ、最後に連絡事項だ」
一通りの説明が早口でされた後、浅海はこの一言を付け加えた。
「硬式野球部への入部希望者は、第二会議室にこの後集まること。以上。」
そう言い残して、浅海は食堂を出て行った。
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翼、宮園、鷹合、美濃部、渡辺。
寮生の中での硬式野球部入部希望者は、とりあえずこの5人らしかった。
食事を食べ切った後で会議室に赴いたこの5人を、先に会議室に入っていた浅海が出迎え、名簿に名前を記入した上で席につくように促した。
「あー、とりあえずはお前達5人だけ、という事
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