高校一年
退路は既に
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少年はやたらと顔を近づけて、首筋に息をふきかけてくる。翼は寒気を感じずには居られない。
「せやせや、まだ俺の名前は言うてなかったな!鷹合廉太郎って言うねん!レンちゃんでもタローでも何て呼んでもええで!仲良くしよらよ、ヨッシー!」
高笑いする鷹合。
苦笑いをかろうじて作る翼。
翼はこの時、運命を呪うという事の本当の意味を知った。
ーーーーーーーーーーーーー
夕方の6時から、寮の食堂が解放されて、新入生に夕食が提供された。この日は、上級生は食堂に居らず、新入生だけに食堂が解放されているようだ。この後寮生ガイダンスもあるからだろう。
「おぉい、ヨッシー!育ち盛りなんやからもっと食わなアカンで!」
「…………」
すっかり鷹合に懐かれた翼は、食事でも一緒に居る事を余儀なくされた。他に知り合いも居ないから逃げようがない。そして他に知り合いが居ないのは、城都出身の鷹合も同じらしかった。
翼は、鷹合が勝手によそった山盛りの白米を、虚ろな目で見つめるしかない。
「なぁ、鷹合。隣良いか?」
その2人の側に、食事のトレーを持ってやってきたのは宮園だった。鷹合の事を知ってるのか、いきなり名前で呼び、呼ばれた鷹合も、
「おう、ミーヤンか。ええで、座れや」と、馴れ馴れしくあだ名で読んだ。
宮園は左胸に「MINAMO WEST」の文字が入ったエンブレムが付いたベースボールTシャツを着ていた。そして、鷹合は「UBAME TIGERS」の筆記体が背中に光るベースボールTシャツ。
普通のプーマのジャージを着ている翼は、そろそろ感づいた。こいつらが絶対野球部だという事を。
「ええなぁ、ええなぁ、硬式上がりは。チームのシャツもバッチリ揃えてなぁ、ええなぁ」
そこに更に、2人の坊主頭の少年がトレーを持ってやってくる。2人とも小柄だ。鷹合と宮園につっかかるような態度をとっている少年は、これは翼から見ても無邪気で可愛い顔立ちをしているはずだが、しかしどうにも気が強く、刺々しい様子である。
「また硬式コンプ拗らせてるのか、お前も進歩しないなぁ美濃部」
「何ィーッ!?」
宮園にせせら笑われて、トレーを食卓に置いて掴みかかろうとした美濃部を、もう片方の小柄な少年が止めた。
「進歩しとらんのはホンマやけ、諦めぇよ」
美濃部はそう諭された瞬間に「え?そうなん?ホントに俺進化してない?」と、勢いを削がれてモジモジし始めた。
「渡辺も大変だな。美濃部のお守りしてばっかりだ。」
味噌汁を啜りながら宮園が言うと、渡辺はフン、と素っ気なく鼻を鳴らした。
こちらは、少し落ち着きがある。宮園の態度にも動じない。
(…こいつら、知り合いなのかよ。俺だけ場違いじゃないか)
翼は黙ってただ
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