高校一年
退路は既に
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待たずに歩きだした。
「ちょ、どこへ」
「学生寮だよ。ついてこいって事。」
振り返りもせず、少年は歩きつづける。
翼はムッとした顔を作ってその背中を追った。
翼が躊躇った第一歩は、こうして踏み出された。
ーーーーーーーーーーーーー
「好村翼君〜は26号やね。晩に寮生ガイダンスするけん、大人しぃするんよ!」
寮の受付のオバちゃんにこう言われながら部屋のロッカーの鍵を手渡され、翼はこれまた立派なマンションみたいな寮の廊下を歩き出した。
「宮園光かァ…」
翼は先ほど会った少年の名前を呟いてみた。彼は寮母から鍵をもらうと、さっさと自分の部屋に引き上げていたが、田舎の島から出てきた翼からすれば、水面の都会人が皆あんな感じだとすると、この先が思いやられるのは当然だった。
「もっと大らかだったよなぁ、島は」
口を尖らせながら、自分の部屋の番号を見つけ、そのドアを開けると
そこには、全裸の少年が立っていた。
翼は、三龍の寮が2人一組の相部屋だという事は知っていた。それくらいの事は、今はネットもある事だし、学校の公式ホームページを見れば分かる。
しかし、そこに全裸の少年が佇んでいて、窓から差し込む春の日差しをその体で受け止めているというのは、そんな所までホームページは書いてくれてはいない。
「…………」
何も言うことができず唖然とする翼を、全裸の少年はゆっくりと振り返った。
背がかなり高い。翼もけして小さくはないが、見上げるくらいだ。胸板、腹筋、腕、足、尻、全て筋肉に引き締まっている。…そして股間にべらぼうなデカさのソーセージをぶらさげている。
「おう、おまんもこの部屋住むん?よろしくやで!」
(城都(じょうと)弁…?)
少年の顔が実に何の違和感もない笑顔を見せているので、翼はついつい少年が全裸で居る事を忘れそうになってしまった。そしてその喋り方は、かなり癖のある、テレビでよく見るのとは違う城都弁だった。
「ん?どしたん?そんな緊張した顔して?」
少年は顔を引きつらせている翼を訝った。
そして、翼が何かを言う前に勝手に結論を出した。
「あー、そうか!俺のこの筋肉がヤバすぎて、ビビってもうたんか!我ながらここまでムキっとる奴は居らんさけなぁ!うん、しゃーないよ!」
(…別にそこに驚いた訳じゃないんだけどなぁ)
翼はなおさら何を言う気も失せてしまった。
「ほら、早よ!君も自己紹介しぃや!」
「え…と…好村翼…です…」
仁王立ちで求める少年に名前を言うと、少年は歩み寄って、馴れ馴れしく翼の肩に手を回してきた。
「ヨシムラくぅん!よーし、今からヨッシーて呼ぶわ!よろしくな、ヨッシー!」
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