高校一年
退路は既に
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第二話
今日から入寮。
次にいつ帰ってこられるかわからないけど、多分正月くらいはオフがあるはず。
三年間戦ってきます。
しっかり待っとけよ。浮気すんなよ?
フェリーの中でこれだけの文面を打ち込んだ翼は、このメールの最後に「お前が言ったから、野球留学なんてするんだし」と付け加えようとして、やめた。
さすがに、彼女に言われて進学先を選んだというのは滑稽だ。それくらいは翼にもわかった。
窓から水面の海岸線が見えた。
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三龍(さんりょう)高校は、豊緑(ほうえん)州東の大都市、水面市の郊外にある私立高校だ。
学力的には中堅クラス。普通科だけの学校だが、その入試制度には、スポーツ重視型や、自己推薦型、普通の学力試験など、いくつかの種類がある。
翼は学力試験で三龍に合格した。乙黒がスカウトしたんだから、推薦くらいしてくれても良さそうなもんだが、しかし中学の時何の部活にも入らず毎日気ままに過ごしていた事が仇になった。さすがに、帰宅部はスポーツ推薦はもらえないらしい。ここでも翼は、やっぱあいつ大した事ねぇんじゃねぇか?との思いを強くする。そして三月のこの日に、再びこの高校の校門をくぐる事になった。
「よし、行くか」
少ない私物を詰め込んだボストンバッグを一人抱えて、翼は三龍の真新しい校舎を見上げる。
三階建ての白の校舎は、病院と同じような普通の校舎のデザインとは違って、少し洒落ていた。
この日初めて着た三龍の制服も、翼が見慣れた学ランではなく、紺色のブレザーで、水色のシャツを中に着込んでネクタイを締めねばならないという面倒臭いものだ。首が苦しいと散々文句を言っていた学ランが懐かしい。
こういう所で凝ってるのが私学なのだろう。そして、こんな立派な校舎を持つ学校の野球部はさぞ強かろう。
(やっぱ帰りたくなってきたな)
この期に及んで、というものだが、やはり翼にはその一歩を踏み出すのは憚られた。
その一歩を踏み出すと、2度と帰れない、そんな勝手な想像までもが膨らんだ。
「ねぇねぇ、君も新入生?」
立ち竦んでいた翼は、その声にやっと我に返って振り向いた。そこには、キャリーバッグを引きずった、三龍の制服を着た少年が居た。髪は自分と同じ坊主頭、少し日に焼けている。彫りの深い男前な顔をしてるが、少し目つきは悪い。
「ああ、うん」
「もう3分もそうやって突っ立ってるけど大丈夫か?どうした?道がわからないのか?」
少年に言われて、翼はお前こそ3分も俺を観察していたのかよ、とツッコミたくなった。都会人は細かい。
「学生寮こっちだぞ。君もどうせ、寮生だろう。一緒に行くか?」
行くか?と尋ねておきながら、その少年は翼の返事を
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