暁 〜小説投稿サイト〜
東方小噺
出張万事屋、兎が導く魔女の家
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は違う。自らの舌を満足させる味やそれを食べたという経験を積むことが目的の前者。そこにあるのは味の追求だ。それに引き換え自らの食欲を満たすために美味しいと思うものを食べるのが後者。味が良いに越したことはないが及第点さえあれば満足するだろう。
 冥界の主はその点前者というわけだ。てゐ自身、巷の噂で普通に後者だと思っていた。実際に話を聞くというのは大事なことだ。
 まあ、鈴仙やミスティアを見て食べたいと思うのは悪食家な気がしないでもないが。

「じゃあ悩みはその噂のこと? 主に対する誤解を何とかしたいうさか」
「う、うさ? ええとその、そうではないのです。食べるのが好きなのは確かですし幽々子様も気にしてはおりません。寧ろ知り合いにたかれると……ゴホンゴホン」
「私は何も聞かなったうさ」

 思いっきり聞いたしいいネタだがここはそう言うべきである。

「ありがとうございます。問題は先程いった食事の質のことです」
「腕を要求されるってこと? 『この味噌汁は出来損ないだ。食べられないよ』とか」
「いえ、幽々子様は息子でなく海原○山タイプです。静かにチクチク言ってきます。『本物を見せるわ』と昔はよく言われ手料理を振舞われました。美味でした」

 親子の合わせ技。嫌味のハイブリッドである。

「というか作れたのね料理」
「お陰さまで私の腕も上がり今では満足していただいております」

 ○山を満足させるとは中々出来るらしい。今度作ってもらいたいとてゐは思った。
 
「じゃあ問題っていうのは」
「技術ではなく食材のことなのです。幽々子様は最近新しい食材に興味示されまして、早い話が珍味を所望されたのです。色々と狩りに行ったのですが最近は良いものがなくて」
「あいにく珍しい食材なんて余り知らないわ。知恵袋は専門外だから」
「いえ、食材に目星はついているのです。屈強な存在で妖怪の山にいると聞きました」

 ほうほうとてゐは頷く。ならば何故来たというのだろう。

「ただそれは非常に珍しく、出会うのも稀だとうのです。私は自分自身運が良い方だとは思っていません。困り果てていたところにここの話を聞いたのです」
「なるほど話は分かった」

 そこまで聞けば望みを予想することはたやすい。
 てゐは告げる。

「――喜べ少女、君の願いはようやく叶う。明確な運がなければ、君の望みは叶わない。たとえそれが君にとって本来望み得ぬものであろうと、不運には対立すべき運が必要だ」
「……っ」
「私にはそれが可能だ。そして君はその機会を得た。見事その敵を打倒し、君の望みを叶えるがいい。宿命の天秤を傾け命を刈り取れ。主の笑顔のために」

 愉悦の笑みをてゐは浮かべる。
 告解室を模した部屋ならばそこにいる両者もまたそれを模したもの。
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