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東方小噺
出張万事屋、兎が導く魔女の家
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 因幡てゐは寝心地の悪さで目を覚ました。
 昨夜は確か暖かな布団にくるまれて安眠についたはずだ。鈴仙へのいたずらも十分に行い精神的にも満たされての眠りであった。
 それだというのに感じるのは冷たい板の感触と古ぼけた本の香りと埃の匂い。心なしか手首も痛い。
 一体何がどうしたのだと眠い目をこすりながら起き上がろうとし――そのまま倒れる。手が全く動かなかったのだ。

「よう、起きたか」

 ひっこりと魔法使いのような黒い帽子を被った金髪の少女がてゐを覗き見る。

「手足を縛って拉致る何てなんのつもり魔理沙」

 金髪の少女、魔理沙に言い返しながらてゐはよっこいせと体を反動で起き上がらせる。
 周囲を見ればそこかしこに積まれた本やよくわからない道具のたぐいがわんさかと置かれている。恐らくだがここは魔理沙の家だろう。掃除が行き届いていないのは家主の性格からか清潔感が薄い。
 永遠亭は馬車馬のごとく動く奴隷もとい同僚の鈴仙がいるし部下の兎もいるから清掃は行き届いている。家のトップが文字通りの姫なので汚いままというわけにもいかないからだ。

「拉致とは酷い言い草ね。永遠亭に行ったら鈴仙は快くお前を貸してくれたのに」
「あの兎今度見つけたら鍋にしてやる」

 それか服剥いでマッパで竹林に放置してやろうかとてゐは考える。その上で文屋にチクるのもいい。

「で、あんたは何の用。幸運が欲しいの? 言っておくけどSM趣味は無いから」
「私もそんなのはない。てゐに相談があるんだ。ほら、私って何でも屋やってるじゃない」
「え、何それ初耳」

 思ったままに言うと魔理沙はがっくりと項垂れる。
 実際にてゐは魔理沙が何でも屋をやっているなど知らなかった。そこそこ長いこと幻想郷にはいるつもりだが聞いたことがない。そこから察するに人気がないのだろう。
 そもそも彼女に頼む人がいるのがてゐには不思議だった。魔理沙の家は魔法の森にあるし何でも屋の広告を頑張っているとも思えない。仮に頼むとして何を頼むのだろう。妖怪事なら博麗の巫女の方が安易に有名だ。

「知らないか……そうよね。知名度ないよね。依頼全然来ないし……」
「あからさまに目の前でダウナーになるのはやめてくれない。仮にも、というか本物の幸せを運ぶ兎の目の前で」
「そう、それなんだ!!」

 落ち込んだ表情から一転、魔理沙は元気になる。

「お前への相談はそこなんだ。流石に客が来なすぎるのが気にかかってな。その原因は明確な実績が少ないのと私の事が余り身近じゃないからからだと思うの」
「立地だと思うけど。あと性格」
「でだ。そこで私は町で出張所を出し、ついでに悩み相談所をしようと思ったの」
「いいと思うわよ。けどそれと私が縛られてる関係性が全く分からないんだけど」


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