第百五十六話 加賀平定その十三
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「比叡山とはな」
「穏便にですな」
「ことが済めばよいのじゃ」
「では間違っても僧兵達と揉めることは」
「あってはならぬ」
比叡山の僧兵、彼等についても話す林だった。
「後白河院も頭を悩まされ清盛入道殿も揉めていいことはなかった」
「だからですな」
「あの寺の僧兵達を抑えるべきじゃが」
それでもだというのだ。
「揉めずにいきたいのう」
「しかし若し戦になれば」
「戦うしかないわ」
その時はとだ、林は村井に答える。
「我等とてな」
「義教公と同じになろうとも」
「比叡山に腐りがあるのも事実じゃ」
林はこのこともよくわかっているのだ、都の鬼門を守護する聖山であるがそれでも腐りがある場所であることもだ。
「それならな」
「戦になることもですな」
「仕方がない」
林は苦い顔で佐久間に答えた。
「殿が最もよくおわかりことであろう」
「今延暦寺に邪な僧はいたでしょうか」
明智はそのことについて考えた。
「天下を乱す様な」
「私利私欲のみの僧はおるな」
こうした僧侶はいるとだ、林は答えた。
「そうした者はな」
「しかしですか」
「うむ、それでもじゃ」
だがそれでもだというのだ。
「天下を乱す程の妖僧はな」
「おりませぬか」
「そう思うが」
林はこの時はこう考えていた、だがそれでもだった。
次の日にだ、事前に近江に放っていた者達から驚くべき報が入って来た、それはというと。
「何っ、それはまことか」
「はい」
長政はその報を聞いてだ、驚きの声をあげた。そのうえで報を届けて来た者に言うのだった。
「あの者達は延暦寺にいるのか」
「今も」
「延暦寺から来たとは聞いていたが」
それでもだというのだ。
「まさか今もか」
「おります、延暦寺に」
「左様です、久政様を惑わしたあの者達が」
「あの時何処に消えたかと思ったが」
「延暦寺に潜んでいました」
「そのこと義兄上にお伝えせねばな」
「殿にですか」
報を届ける者もここで言う。
「そうされますか」
「これだけのこと、お伝えせぬ訳にはいかぬ」
そのことは絶対にだというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
こうしてだった、長政はすぐにその話を信長に自ら伝えた。信長もその報を聞いてそのうえでこう言ったのだった。
「そうか、久政殿を惑わした者達がか」
「比叡山におります」
「無明、おしてじゃな」
「杉谷善住坊といいます」
「あの者もじゃな」
「どうやらです、あの者が」
「うむ、金ヶ崎の後のあれじゃな」
信長はその時のことも覚えている、それで言うのだった。
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