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ソードアート・オンライン 〜命の軌跡〜
Episode1  『シン』という青年
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一年生。そんな僕でも、自分の思うような生き方や考えを通すには、世の中というものはあまりに窮屈だということは感じとれていた。

「そう、周りの人たちの流れに合わせることで、精一杯だったんだ。生きていく為には、仕方が無かったんだ。力の無いものはそうする他無かった」

現実世界(リアル)で生きていくには、社会の流れにうまく乗らなくてはならない。自分の感情を押し殺してでも、この流れに逆らってはいけない。そう、これは僕だけではない。現実世界(リアル)を生きる人全てがこれに当てはまるだろう。そうすることで、社会という歯車が狂うことなく、スムーズに回っていく。

「だから、架空の人物とは言え、僕は彼に憧れたんだ。こうなりたい、そういう生き方をしてみたいってね」

 拳一つで強大な敵と戦う姿に見入ってしまった。一人の少女を助ける為に世界の全てを敵とすることを選んだ彼に、熱いものが込上げたりもした。彼だけではない、とある作品の正義の味方の話。人々に忌み嫌われようとも、より多くの人を救うという信念を貫き通した紅い魔術師。彼のように多くの者、赤の他人のために命を懸けることができるだろうか?―――いや、僕には無理だ。これは、断言できた。

「物語の話とはいえ、世界の命運だとか多くの人の命を背負う覚悟や重圧は計り知れないと思うよ。実際にそんな選択を迫られても、僕には怖くて逃げ出すと思う」

 仮に、僕が漫画や小説、アニメのように超能力や魔法などの特殊な力が扱えたとしても、彼らのようにはなれないと思う。なぜなら、彼らにとって、それらは付属品でしかない。彼らの本当の武器は心の強さだと思うからだ。

「大それた理想や憧れをいつまでも求め続けるわけにはいかなったし、自身の身の程も弁えられないほど子供でもないしね」

現実はやさしくできてはいない。それが真実で、この厳しい世の中を生きていく為に、僕は理想を心の奥底に閉じ込めた。

「でも、全て捨てることができなかったのは、僕が完全に諦めることができなかっただけの、いわば未練かもしれない」
 
再び苦笑しながら巨大な碑を見上げた。知らない名前ばかりがずらりと刻まれている中、知っている名前を見つけ、そこで視線を止める。ゲームクリアを目指す為、最前線で戦い続ける攻略組。その仲間入りを目指しながら、日々努力を重ねていく中層プレイヤー。そんなプレイヤーたちを陰ながら支えている職人や商人たち。

「彼らから見て、僕はどのように映っていたのかな?よし、まだ時間はあるから少し昔話をしようか…。だから、もう少しだけ付き合って」

 巨大な碑にそう呟きながら、僕はこのソードアート・オンラインの世界で戦ってきた日々を一つ一つ思い出しながら語る。





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