第三十六話「元気万倍、レイパンマン!」
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向けられたわけでも、ましてや敵意を向けられたわけでもない。
視線が合った。ただそれだけで、私は魂の根底からこの生き物に敵わないのだと本能が悟った。
――いや、そもそも比較することすらおこがましいのだ。
オーディン様が直々に封印処置をした特一級指定の魔物。
その意味を初めて理解した。
ただ、何故だろう……。
さっきまでは死ぬことが怖くなかったのに。
色の消えたこの世界から解放されると、安らぎすら覚えたのに。
今はまだ、死ねないと思う自分がいる。
「ぁ……そう、か」
地面に大の字になりながらピクピクと痙攣する少年を見て分かった。
私は、ヴァルキリー。見習いとはいえヴァルキリーなのだ。
ヴァルキリーの本懐は勇者様と添い遂げること。
ヴァルキリーの使命はオーディン様の尖兵。戦を司る兵士にある。
しかし、それとは別にもう一つある。あったんだ……。
―ーそれは、人間を守り、導くこと。
今一人の人間の命が消えようとしているこの状況の中、私はヴァルキリーとしての使命を――いや、大前提を心で、魂で悟った。
ヴァルキリーは人間を守り、勇者へと導く存在。
見習いヴァルキリーといえど私も戦女神の名に連なる者。
一度は捨てたこの命、せめて最期はヴァルキリーとしての使命を遣り遂げたい。
――たとえ、この命が尽きようとも、少年だけは助ける……!
色褪せたこの世界に少し、色が芽生えた。
私は少年を守るようにアヴェントヘイムに立ちはだかる。
私も少年も生き残れる確立は限りなく低いだろう。もしかしたら臆に一つもないかもしれない。
だけど、少年が助かる見込みが僅かなりともあるのなら、囮になる価値はある。
「――私は、ロスヴァイセ。この少年を殺めるというのなら、私が相手になります!」
キッと敵意を込めて睨みつける。魔術が使えない私では瞬殺される可能性が高いけど、一秒でも多く時間を稼がないと……!
「グギュァァァアアアアアアアアアッッ!」
私の敵意に呼応しアヴェントヘイムが必殺の魔方陣を展開する。
巨大な魔方陣が紅く発光して――。
「……っ」
突如、強烈な存在感が沸き起こった。
まるでオーディン様のような、いや、下手をすればそれ以上の存在感。
それが、まるでいきなり現れた。それも、背後から。
アヴェントヘイムも展開させた魔方陣を消し、警戒した目を向けている。
目の前の敵に注意しながら慎重に振り
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