第三十六話「元気万倍、レイパンマン!」
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首を思いっきり挫いた様子だ。
「オウマイシット! ガッデーム! ガムシロープ!」
――思っていたよりは余裕があるみたいね……。
少年が氷柱を引き抜くとふくらはぎから鮮血が吹き出た。
「あ……貧血」
ふらっと身体を揺らした少年はそのまま仰向けに倒れた。なぜか私の膝を枕にして。
「えっと……あの……」
困った。こんなときはどうすればいいのだろうか。
怪我をしているのだから、退いてなんて言えないし可愛そう。
けれど、膝枕なんて今までしたことないし……。
というか、アヴェントヘイムに命を狙われているこの状況でマイペースを崩さない彼はもしかしたら大物なのかしら?
「グルォォォオオオオオオッッ!」
「だからトトちゃんうるさいよ?」
そんな少年の態度を馬鹿にされていると思ったのか、怒りの咆哮を上げたアヴェントヘイムは大きく口を開くと、紅蓮の炎弾を吐き出した。
俊敏な動作で跳ね起きた少年は私を突き飛ばし、自身も反対側へ逃る。
しかし、灼熱の塊は少年の後を追跡し、その華奢な体躯を呑み込んだ。
「うぉぉぉおおおおお! あっちいぃぃぃっ!」
いけない!
少年は人間だ。人は体表の三割以上のやけどを負うと死に至る。こんな業火を受けては少年も無事ではすまない。ましてや脚に重症を負っていたのだから尚のこと。
反射的に少年を助けようとするが、重大な事に気が付いた。いや、思い出したというべきか。
落ちこぼれである私の所以。
これほどの火傷を治癒するとなると中級以上の治癒魔術でないと助からない。
術式は知識としては知っている。魔力も十分にある。が、私にはそれを発動させるに至る経験も実績もない。
「ギォォォォォォォ!」
「ぽにゅっ」
追い討ちをかけるアヴェントヘイム。その強大な尾で少年を叩き潰した。
……っ!
―ー躊躇している余裕はないでしょ、ロスヴァイセ!
たとえ失敗に終わっても何もしないよりはマシなはず!
急いで少年の下に向かおうとして――。
災厄の化身と目が合った。
「ぁ……」
この瞬間、私は悟った。
今、目の前にいるこの存在――アヴェントヘイムが私の死だと。私は死ぬのだと。
自分はただただ矮小な存在であり、アヴェントヘイムに比べればとるに足らない小さな存在。
私程度の見習いヴァルキリーなど消え入る前の小さな火の粉であり、【壊滅せし者】の気まぐれでこの命は左右されるのだ。
殺気を
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