第一部:蒼の鬼神
悪魔と契約した少年
2
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き
べることすらできないのだ。大抵の悪魔は獣の様な鳴声を立てるのみだ。にも拘わらず、《蒼燐光の鬼神》は(不完全ではあっても)人の言葉をしゃべる。これはつまり、この悪魔が相当高位の存在だ、という事を示しているのではないだろうか。
今更になって、ロードは自分が恐ろしい存在に魂を売った、という事を自覚した。
「うるせェッ!!」
喚き続ける聖職者を黙らせたのは、いつの間にか右腕から流れ出る鮮血を止めた刺青の男だった。すでに疑似獣人化は解け、人獣の姿から人間の姿に戻っている。
「てめぇ……何だその剣は……俺の《硬皮甲》をあっさり切り裂きやがった……」
男が口にしたのが、《フィジカル・エンチャント》と呼ばれる術であると、ロードは与えられた知識から察した。男は残された左腕を握りしめると、叫んだ。
「ハッ!!面白れぇ!!ここ暫くお前ほど強い奴とは戦ってねぇ!!面白れぇ!!面白れぇぞ!!――――俺を殺して見せろ!!」
バグン!!と再びエネルギーの爆発。男は再び人獣の姿になった。全力の突撃。だが、やはりロードにはそれが多少遅く見える。最適なタイミングを狙って、剣を振ろうとし―――
「ッ!!」
男の攻撃が曲がった。ロードの体に攻撃がヒットする。吹き飛ばされるロード。だが、最初に攻撃を食らった時の様に、骨が折れたりはしない。鈍痛が響くのみである。
「ハッ!防御力も上がってるってのかよ……」
男はしかし、あきらめた様な表情は見せない。愉快そうに笑い、再び拳を握る。
「な!何を遊んでいるのです!!は、早く殺しなさい!!はやく!!はやくぅ!!」
「ったく……煩せぇなぁ……仕方ねぇ。こいつで終わり、か……」
瞬間、男の姿が掻き消える。大地が抉られている。超人化したロードの動体視力でも捉えられないスピード。並みの人間ではなくても、防御は難しいだろう。
だがしかし。《蒼燐光の鬼神》の《神宝》を与えられているロードに対して、直線攻撃は愚策だ。それを知っていながら、あの男は攻撃してきたのだろう。
――――案外、いい奴だったのかもしれないのにな。
なぜ犯罪者などという存在になったのだろう。そう思いながら、ロードは剣を振るう。それは今度こそ男の命を刈り取り、その後ろ、恐怖にむせび泣く聖職者すら切り殺した。
後に《奴隷王朝時代》と呼ばれることになる時代、その出発点となった最初の出来事であった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ