第一部:蒼の鬼神
悪魔と契約した少年
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のロードには……いや、普通の人間には出せないような剛速の一撃。《ウォーロック》になったことによって、身体能力も格段に増加したのだ。それこそ、人間を超えるまでに。
男の拳が、あっけなく白亜の大剣に切り裂かれる。吹き出す鮮血が、路地を汚していく。攻撃の夜はそれだけでは止まらない。突き出された男の右腕は切り飛ばされ、聖職者の体もまた、切り裂かれる。
「ぐぉっ……」
男の反応は、激痛に顔をしかめてはいるが慣れたものだった。普段から戦場でダメージを受けているせいだろう。だが、戦闘慣れしていない聖職者の反応は異様だった。
「い……いきゃぁぁぁぁあああああああッ!!」
浅くえぐっただけなので、さほど血が出ているわけでもないし、刺青の人獣ほど致命傷なわけでもない。それでも、聖職者はまるでそれが世界の終りでもあるかのように喚きまくった。
「ち、血が!!私の血がぁぁぁ……血が出ている……!!あああぁぁ」
ぼたぼたと涙を流しながら喚く聖職者。それを眺めるロードは、自分が異様なまでに平静であることに気付き、戦慄した。
奴隷牧場にいたころから、もともと《恐怖》という感情はあらかた麻痺していたと思う。わずかに残るさらわれる前の記憶でも、やはり自分はあまり感情とは縁のない人間だったように感じられる。だが、これは異常だ。相手の命が、全く感じられない。命の『価値』とでもいうべきものが薄れている。そんな感覚にさいなまれるのだ。
――――コヤツノ魂ニハ、汝ホドノ価値ガ無イ。
こころの奥で、誰かが――――いや、その名前をもう知っている。《蒼燐光の鬼神》が呟く。
ロードは仮説を立てることにした。《ウォーロック》は命の重みを理解できない。それは恐らく、《悪魔》に魂を売るという、「自分の魂」というもっとも重大な命の価値を既に失っているからだ。《ウォーロック》は本能的な面で魂の価値を感じられない。その《ウォーロック》個人の道徳と感情によって殺傷行動を制限しなければいけないのだ。
さらには、悪魔という魂を求め、殺戮の本能にのみしたがって行動できる存在を内に秘める形になっているせいだろう、本能的に「殺す」ことを忌避しなくなってくるのだ。それと同時に、《ウォーロック》ら『悪魔と契約した存在』と契約できる悪魔は、契約者の魂を即座に奪わないだけの理性が必要である、という事になる。《蒼燐光の鬼神》は、ロードの「魂が輝くまで」を契約期限とした。それまでロードの魂を食わないと決めているのであれば、かなり本能を抑えるのが得意な理知的な悪魔だという事なのだろう。
さらによく考えてみると、悪魔は人の言葉をしゃべれない。そもそも、相当高位の悪魔でなければ、言葉をしゃ
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