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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十話 一年
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だ。
「……退役など出来るのでしょうか?」
「そうです、とても許されるとは思えませんが」
サアヤが疑問を呈するとデッシュ大佐もそれを支持した。

まあそうだな、許されるとは思えない。となると逃げるしかないんだが何処に逃げれば良いんだろう? 帝国は論外だしフェザーンも今回痛めつけた。行くところが無いな。つまり何が何でも和平を結ぶ必要が有るということだ。あるいは顔を変えて何処かでひっそりと暮らすか……。どうにもならなくなったらレムシャイド伯に相談してみるという手も有るな、力になってくれるかもしれない……。

「まあ、なんとかなるでしょう。……全軍をフェザーン回廊へ突入させて下さい。順番は第十艦隊、第十一艦隊、第十二艦隊、第四艦隊、第五艦隊、第六艦隊、特設第一艦隊、第七艦隊、第八艦隊、第九艦隊、第一艦隊、第二艦隊、第三艦隊の順とします」
俺が命令を出すと皆が驚いた。チュン総参謀長が政府からの手続き完了報告を待たないのですか? と訊いてきた。

「待つ必要は有りません。我々が貴族連合軍に攻めかかる前に手続きは終了するはずです。交渉が纏まった以上、出来るだけ早くフェザーン市民の苦痛を終わらせたい……」
早く終わらせたいよ、何もかもね。俺だって苦痛を感じないわけじゃないんだ……。



宇宙歴 796年 1月 6日    ハイネセン    ジョアン・レベロ



耳元で音がする。TV電話の音か、煩いな。時刻は三時……、眼が良く開かん、五分か……。妻とは寝室を別にしている。政治家の妻になると睡眠不足になるそうだ。否定は出来ない。スクリーンに表示されているナンバーはトリューニヒトのものだった。厄介なことが起きたか、起きなければならん。

「こんな時間になんだ」
『フェザーンで戦争が始まった』
完全に目が覚めた。スクリーンに映るトリューニヒトの目は充血している。どうやらこの男も今起きたばかりらしい。

「戦争? どういうことだ? フェザーン市民と門閥貴族がぶつかった、市街戦が始まった、そういうことか?」
私が問い掛けるとトリューニヒトが首を横に振った。
『違う、同盟軍と貴族連合軍の戦いが始まったんだ』
「!」

「馬鹿な、国債やダミー会社の手続きが済んだのが一昨日だぞ。連中はランテマリオに……、まさか……」
トリューニヒトが頷いた。
『そのまさかだ。ヴァレンシュタインはランテマリオには居なかった。フェザーン回廊の入り口に移動していたのさ』
「なんてこった」
あの小僧、またやりやがった。これで出し抜かれるのは何度目だ?

『レベロ、最高評議会を開く、直ぐ来てくれ』
「分かった、着替えたら……」
『その必要はない、そのまま来てくれ』
「……」
正気か? と思ったがトリューニヒトは大まじめだ。


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