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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十話 一年
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有る。それによっては別な選択肢が発生する可能性が有ると」
トリューニヒトが私を見た。続きを話すのは私か。

「皇帝フリードリヒ四世の寿命だったな。フリードリヒ四世は後継者を定めておらず死後は混乱が発生する。場合によっては帝国を二分、三分する内乱になる。そして皇帝は必ずしも健康ではない。その死は予想外に早いかもしれない、そう言ったよ」
“それは……”ボローンが何か言いかけて口を閉じた。皆が複雑そうな表情をしている。やはり怖いか……。

実際半年と経たずに皇帝は死んだ。エルウィン・ヨーゼフも殺され帝国は国内改革のために和平を必要としている。未だ一年しか経っていない、不思議な事ではある……。恐怖を抱くなというのは難しいだろう。
「まあそういうことだ。怖いところは有るが信頼は出来る。その内君達も彼に会いたがるよ。怖いもの見たさにね」
トリューニヒトが笑い出した。気楽なもんだな……。



宇宙歴 796年 1月 3日    第一特設艦隊旗艦 ハトホル   エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



通信を終えた後、艦橋に居た総司令部要員は顔を見合わせていた。少ししてチュン総参謀長が恐る恐るといった感じで話しかけてきた。
「閣下、本当に和平は可能なのでしょうか?」
「可能ですよ」
皆がまた顔を見合わせている。まあ気持ちは分からないでもない。百五十年戦争が続いている。戦争が有る世界が常態になっているのだ。戦争の無い世界が来るのが信じられないのだろう。

“専制国家が信じられるのだろうか”、“和平を結んでも直ぐに破られるのでは”、そんな意見が出ている。専制国家って信用無いよな。しかし、俺が考えるにこれからの銀河帝国はかなり穏健な顔を持つ国家になる筈だ。同盟よりも信頼出来るだろう。

ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯は和平を結び国内の改革を行うために門閥貴族達を叩き潰す事を選択した。そうでなければ帝国は崩壊すると考えたからだ。その判断は正しい。だが門閥貴族を叩き潰した時、帝政にどういう変化が生じるかをあの二人は考えていないだろうな。

門閥貴族の存在意義とは何か? ルドルフが貴族を作り出した理由は二つある。一つは選挙等に頼らず優秀な支配者階級を作り維持する事だ。まあこいつは失敗した、ブラウンシュバイク公達が叩き潰そうとしているくらいだからな。いや五百年持ったのだから失敗とは言えないのかもしれん。金属疲労を起こして使えなくなった、そんなところか……。

もう一つの理由は平民達から皇帝を護る緩衝材として存在する事だ。元々銀河連邦市民として主権在民を当然の権利として受け止めていた平民階級は皇帝達にとっては何時革命を起こすか分からない潜在的な敵だった。貴族達はその潜在的な敵から皇帝を護るために創られた存在だったのだ。帝国の統治が
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