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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十話 一年
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振り回されるからね。しかし頼りになるし信頼もできる。一日会わなくても平気だが三日会わないと不安になるな。二人では多いが一人くらいはそういう友人が居ても良いだろう。あまり心配は要らないよ」
トリューニヒトの言葉にターレルが“褒めているのか貶しているのか良く分からん評価だな”と皮肉った。皆が笑い出す、ようやく嫌な空気がほぐれた。

「ところでトリューニヒト議長、議長は本気で和平をお考えなのかな?」
リウが問い掛けると皆がトリューニヒトに視線を向けた。興味半分の問いではあるまい、政権の基本方針を確認しようということだろう。少なくとも皆はそう思ったはずだ。

「和平を考えている。同盟はもう限界だよ、いや同盟だけじゃない帝国もだ。戦争をしているような状況じゃない。その事は今日一日で良く分かっただろう。最高評議会議長がフェザーンの操り人形だったなど有り得ん事さ。その有り得ん事が現実に起きた。国内立て直しは帝国だけの問題じゃない、同盟も国内の立て直しを図るべきだ、そうだろう?」
トリューニヒトが私を見た。

「議長の言うとおりだ、あの馬鹿げた国債の額を君達も聞いただろう、十五兆ディナールだ。長い戦争の所為で人口が減少し税収も減り続けている。それを補うために増税し国債を発行し続けた。もう少しでフェザーンと地球教にしてやられるところだったんだ」
皆が頷いている。声を上げて和平に反対する人間はいない。フェザーンの脅威を現実に認識した、そんなところか。

「しかし和平か、誰よりも帝国人との戦いで武勲を挙げている彼が和平……」
トレルが不思議そうな声を出した。何人かが頷いている。
「戦争が好きで武勲を挙げているわけではない。彼にとって戦争は仕事なんだ。それも已むを得ずしている仕事だ。シトレ元帥に聞いたが勝っても喜ぶということは無いらしい、内心ではウンザリしているんだろうな」
皆が顔を見合わせた。思いがけないことを聞いた、そんな表情をしている。

「ちょうど一年前の今日、一月三日、ヴァレンシュタイン中将と話をした。私とレベロ、シトレ元帥の三人でね。帝国に勝てるか? 和平は可能か? ……覚えているか? レベロ」
「覚えているよ。……そうか、あれは一月三日だったか……」
トリューニヒトが深く頷いた。丁度一年だ。あの日から一年が経った……。

「帝国に勝つ事は不可能だと言われた。そして対等の国家関係を築き和平を結ぶ事なら可能性が有ると言われた。そのためには同盟領内で帝国軍将兵を殺しまくるしかないとも言われた。そうする事で帝国の継戦能力を、意思を挫くしかないと……」
「……」

「ありきたりな答えだ、失望が無かったとは言えない。しかし彼は妙な事を言った」
「妙な事?」
ターレルが問い掛けるとトリューニヒトは頷いた。
「帝国には不確定要因が
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