自称王と他称王
六話
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
週も明けた昼過ぎ、漸く帰る事を許されたアレクは意気揚々を自宅へと向かっていたが、未だルームキーがティアナの手にある事に気付く。一応、妄想に縋ってポケットの中を探してみるがキーは無い。
仕方なくティアナにメールをうつと、すぐさま返事がきた。
「丁度あんたの家に居るからすぐ帰ってきなさい……」
ついつい音読してしまったが、何故見計らったように居るのだろうか。
執務官、恐るべし、と首を傾げ唸りながら帰路を進み、部屋の前へ辿り着く。そして何時もの様にポケットに手を突っ込むが当然キーは無い。
何時から他人様の部屋になったのだろうか、と思いながらインターホンを押すと、すぐにドアが開きノーヴェが顔を出した。
「お、帰ってきたか。怪我は……大事に至るものは無いみたいだな」
「なんとか五体満足で生還しやした。ちょいと脳を酷使してきたので、頭の中身はヤバイですが」
「いやそれは……まあいいか。とりあえず入れ」
「へーい」
本当に何時から他人様の部屋になったのだろうか。招かれるように入るアレクは心底から思う。
そしてノーヴェの後を歩き、1Rの部屋に入ると、アレクは目を疑った。
「やっと帰ってきたわね」
「おかえりー」
ティアナは勿論、スバルも居る事は予想がついていた。
だが、彼女等の下にクッションがあり、その下にはカーペットが敷いてある。そして彼女等と対面するように置かれたクッションへ座るノーヴェとの間には、テーブルがある。アレクが記憶では、どれもこの部屋には無かった筈だ。
キッチンの方を見てみれば、ヤカンと鍋しかなかったのに、フライパンやらフライ返しやら調味料やらが。食器の入った食器棚もあった。
逆を向けば、ベッドが高性能折り畳み形に進化して畳まれてあり、端には椅子付の簡易机が。よく見渡せば、カーテン模様も違うような気も。変わらない物は、冷蔵庫しかない。
「ここ、誰の部屋?」
「何言ってんの、あんたの部屋に決まってるでしょう」
「へへー流石にビックリしたみたいだね」
「寧ろドッキリしました。ところで、布団とかは何処に?」
「クローゼットの中よ」
家具よりも問題は枕である。あの表面は柔らかで中はジャリジャリな枕は無事か。あの選びに選んだ枕は健在か。そう思いクローゼットを開くが、見ただけで新品と判るくらい綺麗に畳まれた布団の上に、見違える姿になった枕があった。つまり、ご臨終になられたのだろう。
よし、またバーゲン物の中から至高の一品を発掘しよう。アレクは一つ頷いて即決した。
「無限の荒野に旅出ってきます」
「バカ言ってないで座りなさい」
「へい」
軽く錯乱していたアレクはティアナの有無を言わさぬ声で我に返り、ノーヴェの隣に放置されているクッションの座る。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ