自称王と他称王
六話
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分の方が待たされたのだから。
それに始めればきっと変わり、取り戻す。全身の毛が逆立つような殺気を放った、彼と遜色無い姿を。
「では、武装形態の準備を。私が補助します」
「へいへい」
アインハルトはアレクの胸に手を置き、魔力の流れを感じ取る。
二つの魔方陣が干渉し、構築していく最中、アインハルトは自身の切望も流し込む。
そうして光が収まると、見違えたアレクの姿があった。燃えるような赤い髪に、白い道着と紺のカンフーズボン。そして、これより身に着ける血色の武具が彼の装飾。最後にアインハルトの持つ手甲を填め、修羅の王が完成する。
アレクは背を向け、アインハルトの期待に応えるように箱の方へと歩く。
「誰か〜鏡持ってないっすか〜?」
――と思いきや箱を通り越してギャラリーの方へ駆けて行った。
ふにゃり、と緊迫した空気が緩み誰もが脱力する。そんな中、おずおずと一人、手を上げた。
「あ、あの……わたし、持ってます」
「おう、え〜と……コロンナちゃん?」
「え?」
ドタドタ近寄ってきたアレクに荷物の中から鏡を出したコロナは、手渡そうとした所で名前を間違えられて固まった。
素で間違えてるのか、それとも狙ってボケてるのか。どちらにせよ、こんな空気の中では、中々に不意打ちだった。
近くに居る中、一番アレクに耐久性のあるヴィヴィオが助け舟を出した。
「……コロナですよ、アレクさん」
「む、スマン。で、鏡プリーズ」
「え、……あ、はい」
鏡を受け取ったアレクは、頻りに後頭部を見れるように色々な角度で映す。
だが、アレクの行動にヴィヴィオは何となく親近感をもった。ヴィヴィオも最初の頃は変身する度に自分の恰好が気に成ったものだ。特に、母の真似をしてサイドポニーにした時は。
そう思いながら見ていると、アレクはワナワナと震えだした。
「な、なんじゃこの爆発チョンマゲはぁー!?」
「にゃっ!?」
不満が爆発したアレクはコロナに鏡を突っ返すと、驚くヴィヴィオ達に目もくれずアインハルトの方へ一目散に駆けて行った。
「ちょ、おま、なんだコレ!? あとこの縛ってある揉み上げも!」
「何か問題でもありましたか?」
「問題だらけだ! 気に成ってしょうがねえ!」
「お似合いですよ、アレディ・ナアシュ」
「お前の目の方が問題だなオイィッ!?」
「そんな事よりも、早く武具の装着をお願いします」
「人の話を聞けぇぇぇぇ!!」
次いでアレクとアインハルトに食って掛かるが、完全に一人相撲だった。
ただ、今の大きくなったアレクとアインハルトでは、大人が子供に絡んでいるようにしか見えてこない。
見兼ねたティアナが近寄り、大きく腕を振り上げた。
「もうそれで我慢なさい!
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