自称王と他称王
六話
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「そして学校でクロスファイトな感じがするんで、俺このまま休んでいいっすか?」
「流石に学校で仕掛ける事は無い……んじゃないか?」
無い、と言い切りたいノーヴェだが、今迄を思い出すと言い切れない。アインハルトが仕掛ける形なのは予想出来るが、その引鉄はアレクが引きそうな気が多分に感じる。
どうする、と視線を受けたティアナも腕を組む。昔、恩師が娘可愛さに授業を覗いていた事があったらしいが、流石に自分はやる気になれない。となるとやはり対戦時まで接触させない方が良いか。
ティアナは仕方ないと頷くと、アレクは渾身のガッツポーズをとった。
「ま、此処でも勉強できるしね。変身魔法の事もあるから、魔法構築も基礎から確り教えてあげるわ」
続く言葉でアレクは崩れ落ちた。
向こうでも勉強、此処でも勉強、考えただけで頭がどうにか成りそうだった。
だが、せめて、此処が自分の部屋だという証がほしい。それくらいの自由は許されて良い筈だ。そうティアナに悲願する。
「姐さん、せめてルームキーだけは……返してくれやせんか?」
「いいわよ。はい」
ぽん、と予想以上に簡単に目の前へ置かれたのでアレクは目を疑うが、すぐにかっ攫うように取る。キーさえあればテロを防ぐ事ができる。キーさえあれば明日から自由だ。
もう渡さねえ、もう放さねえ。そんな目で視線を戻すが、何故か自分の手中のキーらしき物がティアナの手にあった。
「複製したのよ」
「姐さんそれは――って、せめて質問くらい間を置いてもいいじゃないすか!?」
アレクは生活どころか質問の自由さえ無い事に絶望し、心底から崩れ落ちた。
◆ ◇ ◆
対戦当日。ティアナの先導の下、ノーヴェが押さえた場所に向かうアインハルトは、胸に抱いた赤い布をより強く抱きしめた。
この手甲のお蔭で毎日夢を見た。大地を轟かす震脚を見れた。暴雨のような剛腕を見れた。この身を下す蹴りを見れた。そして、見下ろす王を見上げた。より鮮明に、より詳しく見る事ができた。
だが、その夢も今日で終わりだ。あの猛攻を断ち、蹴りを空に切らせ、その胸を拳で穿つのだ。
(クラウス、今日こそ無念を一つ、晴らします)
辿り着いた先に、アレクは居た。この手甲が入っていた箱の上に腰かけ、億劫そうにして。まだ、彼に成り得ない姿で。
だが、もう少しで変わる。そう思いながら近寄って行く。
「やっと来たか……」
気怠そうに立ち上がる最中、アレクの呟いた言葉に、胸が高鳴る。
そう、やっと来たのだ。この日が、この時が。
「お待たせしました――――アレディ・ナアシュ」
「……俺はアレクだ」
不快そうに顔を歪めるが、敬称くらい好きにさせてほしい。待っていたのは同じ……いや、自
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