自称王と他称王
六話
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だが落ち着かない。矢張り誰の部屋か分からなくなったからか、どうも視線があちらこちらに行ってしまう。軽いテロにあった気分だ。
「ねえアレク、この部屋見てどう思った?」
「見事な不法占拠かと」
「え!? 不法占拠!?」
「え? テロじゃないんすか!?」
「違うよ!」
発案実行隊長のスバルが感想を訊くが、アレクは予想を大幅に超えた感想をよこした。調理道具も勉強机の一つも無かったので、良かれと思ってやったことだが、不法占拠と思われるとは。とてもいいカウンターを食らった気分だ。しかも裏腹無い声色なので、とてもよく効いた。
頑張ったのになぁ、と肩を落とすスバルに、ティアナとノーヴェはその奮闘ぶりを知っているので流石に不憫と思う。
とりあえず今はアレクの事、とティアナは視線を戻す。
「まあ、少なくとも悪い方へ変わってない様で安心したわ」
「個人的には自由生活が圧迫されて悪い方へ行ってると思うんすけど」
「あんたの場合、自由過ぎて問題なのよ。それより、今まで何してたか話してくれる?」
「修練っす」
「……離れてやる必要があったの?」
「俺、デリケートなんで、見られてると、どうにか成っちゃいます」
「いやお前、それは嘘だろ」
ふぅん、とティアナは一端追究の手を止め、ノーヴェとじゃれ始めたアレクの考察に入った。
スバルがこの部屋をコーディネイトしている間、ティアナはアレクの素性を調べていた。
二年前あたりに被害者という形でストリートファイトに手を出していた事、三年半前に一人暮らしを始めた事、六年前に両親と死別して叔父のフェルヴィスに引き取られた事。ストリートファイトの事は置いといて、一人暮らしを始めた経緯については、少し考えさせられるこのがあった。
四年前のJS事件後で地上本部の指揮系統が一時混乱していた時期、便乗するように一時期犯罪率が増加し、各警防署も多忙を極めたらしい。その中にフェルヴィスも居り、管理局から誘いが来る程腕っぷしが強い彼の主な担当は暴れ出しそうな者や凶悪犯で、何かと恨みを買いやすい位置に居る。
なのでアレクの一人暮らしは、逆恨みの標的に成らないようにと隔離した、というのがティアナの読みだ。直接の関係は無いとしても、JS事件に関わったティアナからすれば、何かと気になるようになっていた。事件が関係して一人暮らしに成った事や両親の死別、その辺りが自分と似てる所為かな、と当たりはついているが。
アインハルトという単語が聞こえたので、ティアナは意識を戻す。
「ああ、そうだ。大人モードの事はアインハルトに伝えておいたぞ」
「お手を煩わしたようで。んで、何て言ってやした?」
「直接お渡しします。若し宜しければ補助もいたします。と言ってたからとりあえず学校で受け取ればいいんじゃないか?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ