第55話 「ジークフリード・キルヒアイスの憂鬱」
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したがらん。どこかで利益を出す。それがこちらにも利があるのか、利用されているだけなのか、これを分析するんだ」
宰相閣下の物言いは利に基づいている。
まるでフェザーン商人のようだ。しかしそれだけに向こうでもやりにくい相手だろう。
その後はスパイ網の構築と分析。
宰相閣下が構築された選挙対策本部。
改めて聞くと驚かされる。
まさか同盟の選挙にこちらから人を送り込んで、立候補させているとは。
「抜け道なんぞいくらでもあるものだ。利用できるものは何でも利用する」
薄い笑みを浮かべたまま宰相閣下が言った。
そして立ち上がる。
話はこれで終わりらしい。
たったこれだけの話をする為だけに足を運ばれる。TV通信で終わるような話だが、それではいけないのだろう。
直接、会って宰相閣下から命ぜられた。
その形式こそ重要なのだ。
■オーディン リッテンハイム家 ジークフリード・キルヒアイス■
リッテンハイム候爵家に無理矢理連れてこられてしまった。
ラインハルト様がブラウンシュヴァイク家に連れて行かれたように、わたしもリッテンハイム家にいる。
ひどい話だ。
わたしみたいな平民に対するものとは、このように理不尽なものか……。
じーざす。
特にリッテンハイム婦人であるクリスティーヌ・フォン・リッテンハイム様に至っては、まるで姑の如きものだった。
「ジークフリードさん、窓の桟に埃が残っていますよ」
「あらなにかしら、このスープ。塩辛いったら、わたくしを高血圧にするつもりかしら?」
「これだから下賎な生まれは、あなたをリッテンハイムの婿とは認めませんよ」
いったいどこの姑だ。ろくなもんじゃない。
リッテンハイム候が諫めていたが、婦人は平気なものだ。
「あら、こういうものじゃないの? へんね〜最近放送していたお昼のドラマでは、こうだったのだけど……」
などと言いやがる。
それにしてもお昼のドラマとは、あれかっ!!
華の嵐。
最近放送し始めている。連続ドラマ。通称、昼メロ。どろどろドラマ。
あんなもんに影響されてやがるのかよ。
ハッ、いけない。
私はなんという悪い口調になっているのか……。
それもこれもきっと宰相閣下の悪影響だろう。
脳裏に戦え。ファイトだ!!
という宰相閣下の姿が見えたような気がするが、たぶん幻影だ。
それにしても宰相閣下ならどうなされただろうか?
そう言ってみたら……。クリスティーヌ様が真っ青な顔色となり、全身を震わせて怯える。
「ジークフリードさん、あなたは鬼です。悪魔です。血も涙もないのですかっ!! あのルードヴィヒならばなどと言い出すなんて、ひどい」
よよと泣き崩れてしまった。
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