第1話 誠の鬼、幕末の世界から飛ばされる
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時は明治2年5月11日、函館戦争終結間近の日、元新選組副長“土方歳三”は奇襲を受けた仲間を救うため、部隊を率いて最後の戦場になる五稜郭へ出向き善戦したが、敵の銃弾を受け止む無く戦線を離脱。
史実では土方はこの銃弾によって命を落としたが、性別を偽り彼の小姓として仕え、共に過ごすうちに一人の女として土方を愛した少女……“雪村千鶴”の手当てによって一命を取り留める。本陣まで引き上げる最中、美しい桜が咲き乱れる場所で千鶴を狙い、土方達新選組と何度も戦った強敵、西の鬼達を束ねる大将“風間千景”が姿を現した。自身の遺恨を断ち切る為に己の誇りを賭け、土方歳三と風間千景の最後の一騎打ちが幕を開く。
しかしこれは……世界を巻き込む新たな戦いの…ほんの序章に過ぎなかった。
土方side
函館戦争も間も無く終結しつつあるこの状況にワザワザ蝦夷まで追って来た鬼の大将、風間との一騎打ちは熾烈を極めた。
流石は鬼の大将。こっちが羅刹になってるにも関わらず、全然決定打を入れさせてくれねぇっ!だが…それでも俺は、お前に勝ちは譲れねぇっ!今の俺には、守るべき者がある!だから、たとえ相手が鬼であっても負けられねぇ……負けられねぇんだよっ!!
「土方さんっ!!」
眼に涙を滲ませながら見届ける美しい黒髪を高い位置に結ぶ少女……雪村千鶴は祈る様に手を合わせ、2人の戦いの行く末を…土方を見守っていた
千鶴…思えばお前との出会いのおかげで俺達は此処まで来れたのかも知れねぇな。あぁそんな今にも泣きそうな顔をするな。俺はお前を置いて逝かねえよ。惚れたお前を泣かせたまま逝けるか。
何度も剣をぶつけ合ったにも関わらず、息一つ乱しちゃいない。相変わらず憎たらしい野郎だ。
「ふんっ…羅刹などという紛い物の名は、貴様の生き様に相応しくないな」
風間は不敵な笑みを浮かべながら呟いた。
「貴様はもう、一人の鬼だ。鬼としての名をくれてやろう…」
風間の“鬼”という言葉に反応したのか羅刹化している土方の眼は先ほどまで血の様に紅い色だったが、数刻前に千鶴が土方の傷を癒すために己の血を飲ませたた影響か、純粋な鬼達と同じ金色の瞳に変わっていた。
サァッ……
そしてほんの一瞬だが、微風が桜の花びらを舞い散らし、月明りに照らされ、傷だらけの土方に美しく色映えた。戦場での銃撃戦や風間との斬り合いで傷だらけになり、血が滲み、汚れているはずの土方の洋装がどんな装飾品よりも決して劣らない一種の美しさを感じさせた。それはまさに短い命を鮮やかに、美しく散らせる桜の如く。
「…薄桜鬼だ……」
―――薄桜鬼…それはまさに新選組………特に土方に相応しい二つ名かもしれなかった。己が追い求める理想の為に
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