第五十四話 船旅
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行った。
一方、シーランドの旗を掲げた武装商船。
そこには全く統一性のない武器を持った男たちが乗っていた。
彼らからは潮の匂いとむせ返るような血の匂いを纏っている。
「船長、バートの客船を襲っちまって大丈夫なんですかい?」
一人の男が船長に震えながら尋ねる。
すると船長はその男にらみつけて言った。
「なんだ貴様、恐いのか?」
「い、いえ。そういうわけでは……」
「だったらおとなしくしていろ!!」
「へ、へい」
男は逃げるようにして船長の傍から離れた。
「お前は相変わらず容赦ないな」
船長の横にいた男が抑揚のない声で言った。
その男の言葉に船長は頭を抱える。
「ギャンス、俺はお前の方がよっぽど容赦がないと思う」
船長は半ば呆れ、半ば恐怖の声でギャンスに言った。
「そうか?」
ギャンスは首を傾げた。
その様子を見て船長はかつての親友に対して恐怖と寂しさを感じた。
船長もギャンスも元はシーランドの海軍士官で心通わせる親友だった。
ある日の海の魔物退治に突然ギャンスが突然新兵達を海の底に放り投げたのだ。
魔物に食われていく新兵を見ながら狂ったように笑い出したのである。
当然、ギャンスは軍法会議にかけられて監獄に入れられた。
それが切欠で周りからギャンスの親友ということで白眼視されて自分も軍を辞め、商船の護衛の仕事をするようになった。
それから数ヵ月後の航海中に再びギャンスが現れて武装商船に乗っていた人間を血祭りにあげた。
そして返り血を存分に浴びたギャンスは自分にこう言ったのである。
「一緒に海賊しないか?」
ギャンスへの恐怖から自分は頷いた。
船長はその時の自分の決断が間違っていないとはかけらも思わない。
海賊になったからギャンスが理解不能な殺戮をしているところは見たことがない。
しかし船長には時折、ギャンスが人ではないなにか見えるのである。
どうしてこうなったのだろうと思いながら船長は首飾りを弄っているギャンスを眺める。
ギャンスの首飾りは朱色の宝石ついており、その宝石には巨蟹宮の紋章が刻まれていた。
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