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不老不死の暴君
第五十四話 船旅
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警戒しているだろう」
「バーフォンハイムには何度か行ったことがあるがあそこの人間が帝都の人間に従順とは思えないがな」
「ならば余計警戒しているだろう」

セアはバッシュの言葉に思うところがあった。
バーフォンハイムはアルケイディア帝国本国領南東端にある港町だ。
ならばバーフォンハイムから東へ行って本国領を出、北上した後、西へゆけば本国領に入れる。
そうセアは考えて提案していたがアーシェやバッシュやバルフレアの慎重さかからこの提案は却下された。
セアはそれに対して文句を言う気はないが自分の考えが間違っているとは思えないのだ。
なぜならバーフォンハイムには2年前に帝国に雇われて傭兵としてナブラディアで暴れていた時に出会ったあの男がいる。
あの男は帝都の人間にも顔が利くのでバーフォンハイムに確固たる自治権を確立していることだろう。
だから大丈夫だとは思うのだが無用な軋轢を生んでも仕方ないので黙りこむ。
なんとなしに海をみると小さな船影が見えた。

「なんだ、あの船?」

セアの言葉にバッシュも目を細めて海の果てを睨む。
小さくてよくわからないがどうも軍船――いや、武装商船のようだった。



船長室に一人の船乗りが駆け込む。
そして息を切らしながら船長と水軍士官に報告した。

「船長、不審船が一隻こちらに接近してきます」

その報告を聞いて船長は飲んでいたワインのグラスを机の上に置く。

「旗は掲げているのか?」
「ええ、紋章官によるとシーランド公国の紋章だそうです」

船乗りの報告に水軍士官が眉を潜める。

「シーランドだと?」

シーランドはバレンディア大陸の北東に位置する島国である。
国土全域がヤクトで海に囲まれている為、国外に出るには船を用いるしかない。
そういう理由から優れた造船技術を持っており強力な海軍も持っている。
事実、48年前のアルケイディア帝国との戦争で勝利したことさえある。
数的は圧倒的優位にあった筈であるにも関わらず敗北したこの戦いは帝国水軍に対する嘲りとしてよく使われている。
シーランドの名前を聞いた水軍士官が胸中に複雑な思いを抱くのも致し方ないことだろう。

「それで?どこが不審なんだ?」

水軍士官は不機嫌そうに問う。

「武装商船のようですがこちらに気づいた途端に進路を変えてきたので……」

この報告を聞いて水軍士官と船長は顔を見合わせる。
現在この船はヤクトの領域にいるのだ。
シーランドの武装商船が海賊の類の可能性が高い。

「船長、念のため救援信号の用意を。それと客員に個室に戻るよう伝えてください。私は部下達を配置につけます」
「あ、ああ、わかった」

船長は震えながら頷くと水軍士官は暗い笑みを浮かべながら船長室から出て
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