第二十七話 怪談と都市伝説
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はなるだろう、しかし、これら全てが彼氏のものだという確証なんてどこにもないし、それ以前に人間のものであるという確証すらない、そう、まだ複数の動物のものだという可能性だって残っているのです。彼女はそう自分に言い聞かせながら人間のものではない証拠を……いや、彼氏のものではないという証拠を探しました。そして、一つのものを思い出します。一番最初に見た眼球です。さすがに彼氏の網膜まで知っているわけではないが、少なくとも目の色が違えば彼氏のものではないという確証が得られるでしょう。彼女は入り口付近まで走り、眼球のホルマリン漬けを懐中電灯で照らします。彼女は一言『違う……』と呟いて懐中電灯を当てる方向を色々変えて確認しました。微妙にではあるものの彼氏の目とは色が違う、彼氏のものではないと確信が持てたことで、彼女は腰が抜けたようにその場に座り込んでしまいました。そのとき急に部屋の明かりが灯されたのです」
ここでまた区切りをつける。皆が息を呑んで続きを待っているようなので、俺は大きく息を吸い込んでからなるべく低い声でしゃべる。
「『そこで何をしているんだね?』」
「ひっ!」
「っ!!」
俺の一声で御坂さんが微妙に声を出し、佐天さんが声にもならない悲鳴を上げた。
「彼女はその声に驚いたものの、その声には聞き覚えがありました。彼女がゆっくりと振り返るとそこには何ヶ月も行方不明になっていた彼氏が居たのです。話を聞くと、彼氏は研究者でもあり学業よりも研究を優先するために、転校扱いでこの研究所に篭っていたということでした。そしてこの研究所の敷地内には寮もあり、今はそこで暮らしているということだったのです」
「なーんだ」
「それでは怪談になりませんの」
俺の話をさえぎるように御坂さんと白井さんがしゃべっているが、俺はそれを無視して女声と男声を使い分けながら話を続けた。
「『もう! あなたがああなったんじゃないかと思って心配したんだからっ!』彼女がホルマリン漬けを指差しながら言うと彼氏は優しく答えました。『ああ、あれは前の彼女。今からキミもああなるんだよ』」
「ひぃっ!」
「そ……そうなるんでしたのね……」
「うわぁー」
「おぉー」
俺の怪談話が終わると御坂さん、白井さん、佐天さん、初春さんと四者四様の反応が返ってきた。しかし、初春さんの反応ってどうなんだろう。
こうして俺の話を最後にこの日の怪談はお開きになったのである。
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