第三章
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「今は駄目だよ」
「えっ、何でだよ」
僕はその返事に最初は意地悪かと思った、それで教えるのなら何かを要求されるのかと思った。けれど。
彼は笑ってだ、こう僕に言ってきた。
「もうすぐ授業だろ」
「あっ、そうか
「授業が終わってからな」
それからと言われた。
「話すな」
「それじゃあ次の休み時間に」
「ああ、話すからな」
「それじゃあな」
「次の休み時間の時に話すわ」
このことを約束してくれた、そしてだった。
僕はその授業を受けながら遂にグリーングリーンの歌詞の意味がわかるとうきうきしていた。そして授業が終わってから。
僕は彼の席に来た、そのうえであらためて尋ねた。
「あの歌詞どういう意味なの?」
「あれな、離婚なんだよ」
「離婚!?」
「親父さんが息子に言うだろ」
「うん、抱き締めてね」
歌詞はもう暗唱出来る位に頭の中にっはいっている、だから今も歌詞が頭の中に自然に浮かび出てきていた。
「そうしてね」
「それで次の日な」
「それがわかったってね」
「人生の辛いこととかな」
「それがなんだ」
「離婚だったんだよ」
そうだったというのだ。
「親のな」
「それじゃああそこで親父さんが主人公と話したのは」
「お別れだったんだよ」
我が子へのだ、まさに。
「それで人生のことを教えてな」
「抱き締めたのも」
「お別れだったんだよ」
父と子、それのだったというのだ。
「それで謝罪だよ」
「謝罪って」
「自分の子供を悲しい目に遭わせてな」
「そのことへの、なんだ」
「謝罪だったんだよ」
「そうだったんだ」
「そうだよ、あの歌は離婚の歌でな」
彼は僕に真剣な顔で話してくれた、話の内容が内容であるだけに。
「悲しい歌なんだよ」
「それで重い歌だね」
「そうだよ、わしの親は離婚してないけれど」
僕の親もだ、そうしたことはない。時々喧嘩はするにしても。
「周りにそういう話あるだろ」
「うん、親戚にもね」
離婚した人達がいる。傍目で見ていて随分と揉めていることがわかった。
「いるよ」
「わしの近所にもいるよ。だからな」
「誰でも知っていることなんだ」
「ああ、世の中に離婚なんて幾らでもあるだろ」
「うん、どうしてもね」
「幾らでもあるけれど当人さん達にはな」
どうしてもというのだった。
「重いだろ」
「そして悲しいね」
「そうだろ、だからわしあの歌好きだけれど嫌いなんだよ」
彼は僕にもこう言った。
「悲しくて重い歌だからな」
「だから皆子供の頃には話してくれなかったんだ」
「そりゃこんな話子供には出来ないだろ」
離婚、その話は。
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