第一章
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グリーングリーン
僕はその歌の意味が何もわからなかった、それでほんの小さな子供の頃親にその歌の意味を尋ねた。
「ねえ、お父さんお母さん」
「ああ、何だ?」
「どうしたの?」
最初両親は明るくて優しいいつもの両親だった。その言葉を聞いて僕も教えてくれると思った。それで気兼ねなく尋ねた。
「グリーングリーンって歌あるじゃない」
「ああ、あの歌か」
「あの歌なのね」
急にだった、僕がこの歌の名前を出すとだった。
両親の顔が急に曇った、それでもだった。
僕はそのことに全く気付かなかった、そのまま親にさらに言った。
「あの歌ってどうなったの?どういう意味なの?」
「どうする?」
「どうしようかしら」
父も母もお互いの顔を見合わせた、難しい顔をして。
「まだ小さいからな」
「そうよね」
「早いな」
「まだね」
「この子に言うのは」
「もっと先にした方がいいわね」
こう話しているのを覚えている、今も。
「こうしたことはな」
「どうしてもね」
「俺達のことではないにしても」
「そうしていても」
こう話してだ、そしてだった。
親達は僕に顔を戻してだ、こう言ってきた。
「今は言えない」
「教えられないの、御免なさいね」
「えっ、どうしてなの?」
子供の頃僕は親に尋ねたら何でも教えてもらえると思っていた、けれど。
この時は違っていた、二人共僕に教えてくれなかった、それで。
僕は困ってだ、こう言った。
「何で教えてくれないの?」
「御前もな、大人になればわかる」
「その時にね」
「十年後でも聞いてくれ」
「教えられるから」
「十年って」
子供の頃の僕にとってはとんでもなく長い時間だった。それこそ何時になるかわからない位にまで。だからだった。
僕はどうして両親がこの歌の意味を教えてくれないのかわからなかった。それで不思議で仕方がなかった。
その時からずっとだった、僕はこの歌を聴いたりその歌詞を見たりする度にだった。いつもその歌詞の意味を考えた。
それでもわからなかった、どうしても。
学校で先生に聞いてもだ、難しい顔をしてこう言われた。
「それは君が大人になってからね」
「それから?」
「わかることだから」
こう言うだけだった、先生も。
「今は先生も教えられないの」
「先生もなの」
「先生もっていうことは」
「お父さんもお母さんもそう言うから」
子供の頃の僕は先生にも残念な顔で言った。
「今は教えられないって」
「そうでしょうね、どうしてもね」
「教えられないんだ」
「今はね。大人にならないと教えられないこともあるのよ」
「何でも教えられないの?」
「そう、教えられることと教えられないことがあるの」
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