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悪役スター
第四章

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「いい脚本だね」
「それじゃあ最後の最後もですね」
「頑張って悪役としてやり切るよ」
「最後まで嫌われますか」
「そうするか」
 こう言ってだ、そしてだった。
 彼はヒーロー達に堂々と啖呵を切ってだ、そしてだった。
 改造人間に変身した、とはいって着ぐるみの中は本格的にアトラクションを演じている人が演じた。それでだった。 
 倒されて大佐に戻った時に演じてだ、ヒーロー達を見据えてそのうえでいまわの際の言葉を遺して前から倒れてだった。
 爆発と共に消えた、その後でスタッフから花束を貰って言った。
「有り難うございました!」
「最後の最後までよかったですよ!」
「見事な悪役ぶりでしたね!」
「最高でした!」
「いやあ、とても楽しかったよ」
 秋山も満面の笑顔で彼等に応える。
「またやりたいね」
「はい、オファー出させてもらいますから」
「また宜しくお願いします」
 こうしてだった、彼は最高の気持ちで悪役を終えた。そして。
 事務所へのファンレターはこれまで以上に多かった。その内容はというと。
『ざまみろ!』
『正義は勝つんだ!』
『生き返ってくるなよ!』
『見たか、ライダー達は最後は絶対に勝つんだ!』
『ダブルライダーが御前なんかに負けるか!』
『後は首領も倒されるからな!』
『楽しみにしていろ!』
 これまで以上に熱かった、内容は大佐の敗北を心から喜ぶものだった。そして秋山はそれを見てこう言うのだった。
「最高だよ」
「とても嬉しそうですね」
「ああ、こんないい気持ちないよ」
 こう伊武に言うのだった、事務所の中で。
「生きていて、役者をやっていてよかったよ」
「子供の手紙が圧倒的に多いですね」
 伊武もその手紙を読んで秋山に応える。
「本当に」
「そうだね、それがね」
「またいいんですね」
「いいよ、他の年代の人からの手紙もよかったけれど」
「こっちは全部普通ですね」
 熱演を讃える手紙だ、大佐としての演技を。
 だが子供達のそれは大佐の敗北を喜ぶ手紙ばかりだ、完全に役と俳優を一緒にして書いているものしかない。
 しかしだ、秋山は子供の手紙に喜んでいるのだった。
「また特撮に出たいな」
「悪役としてですね」
「いい役よりもな」
 そちらだとだ、にやりと笑って言うのだった。
「そっちがいいよ」
「そうですか、じゃあまたオファーが来れば」
「出るよ」 
 是非、というのだ。
「それでまたこうした手紙を受けたいね」
「仕事取ってきますね」
 伊武も秋山の言葉に応える、そしてだった。
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