第十四話 真実
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程まで晴れていた空にどす黒い雲が広がっていた。
ポツン、ポツン
また、落ちてきた。
その水滴は次第に大きくなり、その落ちてくる頻度が増し、ついには大粒の雨が降りだした。
この場にいる全員が、その体が濡れようとも気にしていない。まるで、雨など降っていないかのように。
泣いているのだろうか。
ハカリやトキ、アユや轟隊長たちが・・・。
そんなことを思わせる大粒の雨だった。
同時刻 役所 屋上
ふしみイナリ
葬儀は厳かに、そして慎ましやかに行われた。
すべての行程も終わり、皆それぞれの思いを抱きながら帰っていった。もう、屋上には数えるほどの人しかいない。僕は一度家に帰り、着替えてから役所に戻って来ようかと思い、歩き出そうとした時、
「イナリくん、体の方は大丈夫かい?」
声を掛けられた。
声のした方を見ると、そこには、はたけサクモさんとその隣に僕よりも小さな男の子が立っていた。
「あ、お久し振りです。サクモさん。この前はありがとうございました。」
僕は頭を下げ、お礼を言った。
「いやいや、間に合ってよかったよ。それに君達はよく頑張った。」
精悍な顔を綻ばせて答えてくれた。
「いえ、そんな・・・。そちらはご子息ですか?」
僕はサクモさんの隣にいた5、.6歳の子どもの目を向けた。
「あぁ、この子は息子のカカシだ。先日、中忍になったばかりでね。」
サクモさんは少しばかり自慢気だ。里の英雄でも子供には弱いらしい。
「お噂は聞いておりました。カカシさん、ふしみイナリと言います。よろしくお願いします。」
そう言いながら、手を差し出した。
「あ、はい。」
彼は少し戸惑いながらも答え、手を握ってくれた。
「イナリくん、何でそんなにかしこまってるんだ。カカシの方が年下だろうに。」
「あ、いえ、カカシさんは中忍ですので。」
「なるほど、まぁ、そういうことか。いやいや、イナリ君ならすぐ抜いてしまうさ。」
いや、そんなこと本人の前で言ってほしくないんだけど。
「・・・・」
あ、ほら拗ねた感じになってる。この人、意外と鈍感なのかな。
そんなことを考えていると、カカシさんが僕をじっと見ているのに気がついた。でも、僕が気づくと目を逸らしてしまった。
「さて、私たちはそろそろ帰るよ、イナリ君。」
「はい、わざわざ声を掛けて頂いてありがとうございました。」
「では、またね。」
そう言って二人は帰っていった。
その後ろ姿は、どこにでもいる親子で、とても里を背負っている有名な忍でも、その天才忍者と言われる息子でもなかった。少しだけ、ほんの少しだけいいなって思ってしまった。
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