第二章
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「無頼派もね」
「書いてそしてでしたね」
「飲んでね」
ウイスキーをまずくとも飲む、坂口安吾がそうだった。
「女遊びをして薬も打って」
「ヒロポンとか」
織田作之助は結核で死にそうな身体にヒロポンを打っていた、命を削ってまでして書いていたと言うべきだろうか。
「そうしてだったね」
「はい、そうでしたよね」
「酒に女に」
「クスリに」
「まあやっさんは薬はやっていなかったよ」
勝新太郎は置いていてだった、今の話は。
「けれど酒に女にね」
「芸人として稼ぐのと一緒に」
「もう命を削るみたいにして遊んでいたんだよ」
「無茶苦茶な遊びですね」
「それが無頼だよ、けれどね」
「それがですね」
「昔の芸人のあり方の一つだったんだよ」
しみじみとした口調での言葉だった、Kさんの目は昔を懐かしむものになってさえいる。
「真面目な人もいたけれど」
「市川雷蔵ですね」
「あの人は銀幕から離れたらね」
「本当に普通の人だったんですよね」
「至って大人しいね」
そうした人だったというのだ、市川雷蔵は。
「あそこの社長は派手好きだったけれど」
「永田さんですか」
「映画だけじゃなくて野球に競馬にね」
しかも日本のフィクサーになとうとさえした、そうした意味でもかなり派手な人だったことを聞いている。もうこの人も泉下の人になって久しいが。
「あの人もね」
「無頼なところがありましたか」
「そう思うね。色々とあった人だけれど」
「その色々なところがですね」
「あの時は何だって思ったけれど」
やはりここでも昔を懐かしむ目で語るKさんだった、Kさんにとってはその頃のことが今でも忘れられない思い出であることがわかる。
「今思うと微笑ましいものがあるよ」
「永田さんもやっさんも」
「無頼派の作家さん達は知らないけれどね」
Kさんもそこまで歳を取っていない、終戦直後の頃も歴史になってきている。
「あの頃の人達は遊び方もやることも派手な人が多かったよ」
「特に僕が覚えているのは」
誰かというと、その人は。
「やっさんじゃなくて勝新だよ」
「勝さんですね」
「いや、遊び方がね」
それがだというのだ。
「もう派手でねえ」
「高いお店に行って女の人を一杯侍らせて」
「演奏する人まで呼んでね」
そのうえでだったというのだ。
「女の人にも演奏の人にもお酒をサービスして自分も派手に飲んで」
「豪快ですね」
「お金を使うことに何の躊躇もなかったよ」
横山やすしと同じくだというのだ。
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