第一章
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悪い悪戯
勝新太郎という役者がいた、今も尚色々と言われている人物だ。
演技もそうだがその人柄も伝説となっている、豪快でいて気配りが出来ると悪く言う人はいない。そしてその遊びも。
ある映画関係者がだ、よくこう話すのだった。
「あんな人はもういないね」
「今の時代はですか」
「横山やすし、やっさんは漫才だったけれど」
「あの人も凄かったそうですね」
「無頼っていうかね」
この映画関係者はもうかなりのお歳だ、仮にKさんとしておこう。Kさんは僕に対して昔を懐かしむ目で話してくれた。
「遊び方がね」
「飲んで、ですね」
「その遊び方にお金をかけるんだよ」
「もう無茶苦茶な、ですか」
「やっさんも勝新もね」
その勝新太郎もだというのだ。
「凄かったよ」
「やっさんは何かと」
「まああの人はね」
Kさんは横山やすしについてはこう話す、残念そうに。
「あれだったね」
「酒癖が悪かったんですよね」
「酔ってタクシーの運ちゃん殴ったりね」
「飲酒運転とかも」
「小心だったんだろうね、やっさんは」
やはり残念そうに話してくる。
「結局は」
「小心だったんですか」
「だからああした態度だったんだよ」
破天荒ですぐに手が出る、僕もやっさんの弟子になるととかく大変だったという話は聞いている。今も尚語り草になっている。
「何かとね」
「そうだったんですね
「天才だったよ」
Kさんは僕に無念そうにこうも言った。
「あの人は」
「天才漫才師でしたね」
「二人が組むとね」
相方の西川きよしさんとだ、そうすればだったのだ。
「もうあんな面白い漫才はなかったよ」
「ですね、今観ても」
残された映像でそのことを確認出来る、観てみれば。
「面白いですね」
「今が駄目っていう訳じゃないにしても」
「面白さが違いますね」
「過去もその時も今もね」
「あんな面白い漫才師はいなかったですね」
「やっさんは本当の意味での芸人だったよ」
Kさんはこうまで言うのだった。
「だからこそ残念だよ」
「無頼だったことがですか」
「そうそう、無頼だね」
Kさんは僕の今の言葉に膝を打つ様にして答えた。僕達は今お好み焼き屋でお好み焼きを食べつつそのうえで言うのだった。
「あの人は」
「無頼派ですよね」
「太宰治だね」
その太宰や坂口安吾がそこに分類される。終戦直後に名を馳せた作家の一派だ。志賀直哉等既存の作家達に反発した一派をこう分類する。
「そういえば太宰もね」
「関西だと、ここですと」
僕達が今いる大阪だとだ。難波の店にいると余計にだった。
「織田作之助ですね」
「織田作だね、あの人もね」
「若くしてでしたね」
「そうそう、とにかくね」
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