第六章
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「そのことをな」
「わかった、じゃあな」
「ああ」
こう応えただけだった、この時は。
しかしだ、彼は執行部の面々だけになるとすぐに彼等に言った。
「漫画は退廃文化じゃないのか」
「退廃的か」
「そう言うんだな」
「そうだ、漫画は何だ」
本多は周りに忌々しげに語る。
「只の娯楽だな」
「まあな、週刊少年マガジンもな」
「あの雑誌もな」
この時代学生達は右手に朝日ジャーナル、左手に週刊少年マガジンと呼ばれていた。しかし本多はこう言うのだ。
「あんなものを読んでは馬鹿になる」
「だから駄目か」
「假屋」
「君達は漫画を読むのか」
こう竹紙と佐田鹿に問うのだった、ここで。
「あの様なものを」
「いや、読まないな」
「言われてみれば最近」
「あの様なものを壁新聞に載せてはならない」
「じゃあ同志假屋の提案はか」
「却下か」
「却下するだけではない」
それで止まらないというのだ。
「あいつも追放だ」
「俺達の組織からか」
「追放か」
「あいつは退廃文化の崇拝者だ」
だからだというのだ。
「追放だ」
「わかった、じゃあな」
「あいつもな」
こうしてだった、假屋も追放されることになった。丘留の時と同じく会議の場でいきなりそのことが発表された。
それでだ、假屋もまた怒って言うのだった。
「漫画が駄目か」
「あの様なものは認められない」
本多は冷たい目で假屋に答える。
「絶対にな」
「退廃文化と言うがな」
「漫画の様なものを低俗と言うのだ」
「漫画は素晴らしいぞ、使い方次第でな」
「退廃は退廃だ、それに漫画家で成功している者はだ」
手塚治虫や藤子不二雄を念頭に置いての言葉だ。
「誰もが多くの収入を得ているな」
「それがどうしたんだ?」
「奴等はその収入で贅沢に暮らしている」
だからだというのだ。
「あいつ等もブルジョワだ、だからブルジョワの文化は導入しない」
「漫画家がブルジョワだというのか!」
「そうだ、その訳を言おう」
本多は丘留に話した時そのままで語った、それを受けて多くの同志達は彼に賛同してだった、そのうえで。
假屋を糾弾しだした、こうなってはだった。
彼は去るしかなかった、それは彼の賛同者もだった。
こうして組織から假屋派も排除された、しかも排除はさらに続いた。
アメリカ文化の象徴である野球について語った、保守系つまり反動系の雑誌を読んでいた、挙句には日課である毛沢東語録の読書を怠ったとして。
同志達はどんどん排除された、そして残ったのは。
本多と竹紙、佐田鹿の三人だけになっていた。竹紙はすっかりがらんとなった部屋の中で本多に尋ねた。
「おい、もうな」
「いるのは俺達だけだぞ」
佐田鹿も不安な顔で本多に言う
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