4 「MAYDAY, MAYDAY, MAYDAY;」
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かった」
「まあ、なんとかなりますよ」
緊迫した台詞から一転、いつものようにへらっと笑った凪が「それじゃあ」と足を氷の山へと向けた。
「どこ行くんだ?」
「エリア2ですよ。ここの崖を降りた下なんです。今頃先方、あっちこっちで俺のこと探してますから、喚んでやろうと思いましてね。これで」
取り出したのは、角笛。モンスターの気を引くものとして重宝し、モノによってはそれが癒しの効果を秘めたり、筋肉をリラックスさせて攻撃力を上げる効果を持っていたりする。今凪が手に持っているのはそういった特殊なものではなく、ただの角笛のようだ。
「この笛が聞こえたら300秒数えて、それからさっき言ったルートでベースキャンプへ向かうこと。いいですね?」
「「はい!」」
「わかった。くれぐれも無茶はするな」
「……無茶はしなくても、無理はするかな」
「ッおい、クソガキッ!!」
「それじゃあ、また後で!」
滑る氷の上を確かな足取りでひょいひょいと下っていく。まるで散歩に出るかのような鷹揚さに、汀も岬も安心して送り出した。
何せ、相手が自分たちの兄、凪なのだ。いくらギギネブラ4頭といえども、きっと余裕で帰ってくるに違いない。
そう、思っていたから。
菖蒲でさえそう思った。だから、最後の皮肉のような台詞も、結局は苦笑で流したのだ。
名残惜しそうな子供達の背中を押して、できるだけ空から見えにくい場所へ移動する。凪に言われていたことだった。移動するときは、できるだけ壁ぞいに行くようにと。それから、他の動物、特に草食動物が落ち着かない様子ならばすぐにそのエリアを離れるようにと。
(……待ってるぞ、クソガキ)
誰が、弟のようなお前を“死んだもの”として見るものか。
俺はお前の、“菖蒲兄”だろう?
日が陰った。下の方、背中の氷壁越しに響く角笛の音。合図だ。小さく双子がカウントダウンを始める。
カウントダウンが200を切ったころ、角笛よりも遥かに凶悪な咆哮が聞こえた。
******
「おいしい! これ、飽きませんね!」
「でしょう! それぞユクモ名物。何度食べても美味しいガーグァの温泉玉子!」
「おいひいれふよねぇ、わたしこれらいふきれふ〜」
木製の匙を片手にふんわりとした笑みを浮かべた白髪の少女は、嬉しそうにうなずいてまた一口、ぷるると震える温泉玉子を口に放り込んだ。ふわっととろける仄かな甘さと、貴重なカツオ出汁の絶妙な塩味加減が非常に美味で、頬が緩むのは抑えられない。
それをそばでニコニコしながら見ている――否、1名一緒に口をもごもごと動かしているのは、言わずもがな、リー
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