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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
4 「MAYDAY, MAYDAY, MAYDAY;」
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るというのに、それはまるで渓流の我が家で穏やかな朝を迎えたような、幸せな心地だった。

(2人はこんなにも俺のことを好いてくれているんだな……)

―――ならば、なおのこと。俺は、戦わなくてはならない。愛しい者のために。

 双子は凪の腕の中から顔を上げた。10年ぶりに会った兄は、自分たちも同じだけ年を経たはずなのに、あの頃よりも更に遠くへ行ってしまった気がする。
 穏やかな微笑みながらも、大好きな姉と同じその蒼い瞳には、決然とした光をたたえていた。
 それだけでわかってしまう。兄が、もう覚悟を決めたのだと。

「菖蒲兄を頼んだよ」
「……はい」
「……」
「汀」
「分かってる! ……にいちゃ。絶対…絶対帰ってきてね……?」
「もちろん。勝手に死んだら、地獄の淵まで追ってきそうな弟子もいることだしね。それに、可愛い弟妹を残しておちおち死んでやいられないよ」

雪路を、助けるまでは。

 つい言葉をそこの前で切ったのは、そのセリフをいったらまた何か言われそうだと直感したからだった。
 脳裏に浮かぶ、3週間顔を合わせていない2人の弟子の顔。藍色の髪の少女は、きっと凪が穏やかに三途の川を渡るのを許してくれそうにないだろう。口悪く罵りながら引き止めるのが容易に想像できた。赤金の少女はまた暴走する友人を青い顔で止めようとするのだろうか。思わず笑みがこぼれた。
 たったひと月弱会っていないだけで、随分時間が経っている気がする。そんな2人のことを考えるだけで、双子のときとはまた違った温かさが、凪を包んだ。

「ああ、そうそう。3人とも、ちょっと申し訳ないんだけど、念には念をというし、我慢してくれるかな」
「え?」
「こやし玉、持ってるね? それを服に擦り付けなさい。モンスター避けになるから」
「えええ!」
「うん、特にみーには本当に申し訳ないと思う。女の子なのに…。でも背に腹は代えられないから。それから念のため、ベースキャンプの周りの木にもこやし玉をつけるように。いいね?」
「はぁーい……」

 双子がいやいやながらこやし玉を手にごしごしと自分たちの装備をなでつけていたころ、凪は立ち上がって、自分より少し目線の高い菖蒲に笑いかけた。

「2人のこと、頼みました」
「言われなくても頼まれるっつーの」
「それから……」

 ちょっと、そこで言葉を切って、目を伏せる。何かを考えていたのだろう。再び蒼が菖蒲を捉えたとき、そこにはこれから狩りへと向かう者の、命の遣り取りを控えた者特有の、張り詰めたかがやきがあった。

「明日の朝、日が山間から昇ってもベースキャンプに俺が戻らなかったときは、俺は死んだものとしてグプタ町まで帰ってください。その際クエストの異常についてちゃんとギルドに報告するように」
「……分
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