4 「MAYDAY, MAYDAY, MAYDAY;」
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2を指でトントンと叩いた。3人が頷く。
「ので、暗くて不安になるかもしれないけど、こっち……エリア5、3を通って行く道を駆け抜けてもらいます。エリア5にはギィギがいるかもしれないから、足を止めずに走り抜けて。3にはブルファンゴがいたけどさっき俺がいろいろやったから、多分もう何もいないはず。居たら…岬、みー。頼むよ」
「あいあいさー!」
「任せてください。……あれ? 兄さんは?」
「俺は方々走り回って囮になる」
空気が凍った。目を見開いた岬が、信じられないように首を横に振る。汀が、声を震わせた。そのまつげにみるみる湛えられた大粒の涙に胸が痛むが、それもこれも彼らを守るためなのだから、いくらでも我慢しよう。
「何……言ってんの、にいちゃ。嘘でしょ」
「いや。悪いがここは譲れない。みー」
「嘘よ…無茶だよ。だって、だってギギネブラ4頭なんだよ!? そんなクエスト聞いたこともないよ! 2頭同時狩猟だって、パーティを組んで行くのが当たり前なのに、なんでにいちゃがソロで4頭相手に……!」
「落ち着いて。いいか、今は時間が惜しい。よく聞くんだ、汀」
名前を呼んだ凪に息を飲んだ汀の、その幼い手を上からきゅっと握り締めた。温かい、子供の体温。愛し妹のぬくもり。
「今、この場にいるのは汀、岬、菖蒲兄と、俺の4人。そのうち菖蒲兄は戦闘員ではないから、実質戦えるのは3人だ」
菖蒲が唇を噛んだ。足でまといになってしまっているこの状況が悔しく、また凪たちに負担をかけているのがつらいのだろう。しかしこんな状況、誰も予測なんてできないのだから、悩むだけ損だ。そう言うと菖蒲は「また、お前は……」と苦笑した。
「その中で一番戦闘能力が高いのは誰?」
「……にいちゃ」
「そうだ。俺が行った方が一番効率がいい。それに、1人の方が遠慮なくなんでもできるからな。気が楽だよ」
「……」
「いいか、みー。岬もよく聞け。お前たちには大切な姉がいるだろう?」
「……雪姉」
「ああ、そうだ。雪路を救うには菖蒲兄の力が必要だ。わかるな?」
「うん」
「菖蒲兄を守ってほしいんだ。それが、ひいては雪路を救うことにもなる」
分かってくれただろうか。覗き込んだ幼い少女の目は、さきほどよりも更に大粒の涙が溢れんばかりに潤んでいた。ぼろぼろと泣きながら、汀が必死に言葉を募る。
「でも……ヒック…でもね…にいちゃ。みーは、凪にいちゃのことも…守りたいんだよ……!」
「僕もですよ、兄さん…!」
胸にタックルしてきた弟の方も、顔が歪んでいる。
凪は、言葉もなかった。
(ああ、そうか。分かっていなかったのは、俺か)
二人の頭を腕に抱えながら、胸に湧き上がるあたたかいものに微笑を浮かべていた。これから飛竜4頭を相手に取
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